第2話

 あの日から大分年月がたった。私は捕まる事なく日々を過ごしている。あの時から変わった事は、1つだけ。引き金を引いた感触を思い出し震えるぐらいだ。

 あの事件は別の犯人が捕まった。その人物が何を目的にしていたのかはわからない。もしかしたら、私に接触してきた組織が用意した身代わりかもしれない。


「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい。と、聖書には書いてある。悪に負けてはならない。神の御心には沿っているはずだ。」

 と、事を終えて報告した際にそう言われた。その時、私は興奮して支離滅裂な事を言っていたのだろう。

 然し私は、懺悔室へと赴く。毎週欠かさず。町はあの事件後も変わらず、信仰は徐々に失われていった。

 

 主よ、私は過ちを犯しました。人を殺したのです。信仰を回復したかったのです。

 その為には彼を殺す他ない、そう思ったのです。ただ、それは過ちだったのかもしれません。信仰は失われていっています。金を稼ぐ事のみに若者は捕らわれて、主の意志を理解しようとしません。

 このような現状が続くという事は、あの事件は主の意思では無かったのでしょう。本当は自首をし適切な裁きを受けるべきなのでしょう。

 然し、私にはどうしてもやらなければならない事があるのです。私を誑かしたあの組織を突き止めて報いを受けさたいのです。

 このような考えが間違っているのはわかっています。『復讐はわたしのすること、わたしが報復する』と主は仰りました。本来は彼等を祝福しなければならないのでしょう。

 ただ、それだけは許せないのです。この気持ちを鎮める事ができないのです。

 未だ未練がましく悩み続け、罪を償わない事をお許し下さい。

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