第26話 闘技大会開幕!

朝から闘技場は熱気に包まれていた。今日は新入生による闘技大会の日だ。42チーム、総勢126名の戦いが始まろうとしている。


あくまで学生による闘技大会なので、安全面も考慮したルールとなっている。まずは勝敗については、チーム内の全員が戦闘不能になった場合、制限時間が経過した場合、降参が宣言された場合に決着がつく。参加者は制服の上に特殊なベストを着用して闘技大会に参加する。このベストは対物理、魔法防御に優れているが、を受けると使用者を昏倒させる魔法が付与されている。つまり、戦闘不能とはそういう事だ。また、勇者学院の生徒は物理攻撃がメインとなるのだが、殺傷能力の高い剣や槍、矢などは殺傷能力のない競技用の剣、槍、矢を使用する事になっている。制限時間は大会スケジュールがあるため、1試合5分、準々決勝からは1試合10分の制限が設けられていた。その場合は戦闘不能者の数で勝敗が決まる。降参はそのままの意味だ。また、何かあれば医療チームに加え、聖女の名を持つ治癒学院のリクシアナ・クラーク学院長が治療魔法を施せるように準備がしてある。


そんな万全の体勢の中、ついに第1試合が始まった。今日のスケジュールでは午前中に1回戦、午後から2回戦となっており、朝早くから試合が始まる。競技大会と違い、公開されないので、観客は学院関係者しかいない。例外として王政関係者や魔法、騎士団関係者も見学には来ている。


試合の経過を見ていると、やはり前衛、後衛がしっかり役割をこなしている所は順調に勝ち上がっている。余談だが、レイのチームは何故か勝ち上がっていた。シード組であるアレクは午前中の試合がなかったので、午後からが初試合となる。昼食を挟み、アレク達の初戦が始まった。



2回戦トゥナ、アレク、ルーナ対マリン、マルクス、エドガーの試合。前の試合で、マルクスが持ち前の速さで相手を翻弄し、2人が魔法と弓でダメージを与えていくスタイルだった。試合前に軽く打ち合わせをし、闘技場に入る。両者所定の位置に着き、合図と共に戦闘が開始した。


まず動いたのはやはりマルクスだ。彼の機動力で前衛であるルーナを交わしてトゥナに向かう。


「清らかな水の流れは滑らかなる水の領域ウォーター・エリア


トゥナの魔法でトゥナの周囲に大きな水たまりができる。水たまりとは言っても大きさは池と言っても過言ではないレベルのだ。マルクスがその水たまりに足を踏み入れた直後――


ズデーーン!


水の領域ウォーター・エリアに足をすくわれ、盛大にこけたのである。その間に、トゥナの放った次の攻撃がマルクスを襲い、あっけなく戦闘不能に陥った。


残る2人は……


ルーナがマルクスと同じように相手の前衛を無視して突っ込み、すでに倒している。こうしてアレクの出番はなく、初戦は突破されたのだった。


「ふう。上手く行きましたね」


訓練用の剣を鞘に納めながらルーナが戻ってくる。トゥナはルーナを称賛しながら返す。


「作戦通りですね」


あらかじめ用意していた作戦が見事にハマり、勝利を手にする事ができた。3回戦は明日の午前中、勝ち上がれば準々決勝は午後の予定だ。


試合を終えた3人は観客席に戻り、残りの試合を観戦しながら、あれこれと対策を考えていくのだった。トーナメントを確認すると、次の対戦相手はここまで勝ち上がったレイだった……。

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