第24話 チーム結成!

パーティー前夜、各学院の生徒が到着し、長旅の疲れを癒している頃、アレクとトゥナはリットマン学院長を訪れていた。


「確かに当学院では全員参加してよろしいですよ。ガーネットの意図はともかく、今回は生徒側に選択権があります。男子生徒はアレクさんから伝えて下さい。女子生徒はトゥナさんにお願いできるかな」


「はい。分かりました」


今朝、担任のガーネットから言われた事の真偽について、学院長に聞くと思わぬ答えが返ってきた。トゥナの言う通り、そんな制限はなかったのだ。学院長に返事をした2人は学院長室を後にする。


「良かったね」


宿館に戻る途中、一緒に歩いているとなさんに声をかけられた。本来、彼女の部屋は2階だが、女子生徒に伝言を頼まれているため、一緒に4階まで上がる必要がある。


「うん。付き合ってもらってありがとうございます」


2人は他愛のない話をしながら歩き、4階に上がる。


「それではまた明日」

「うん。また明日」


トゥナが軽く会釈をして2人は東西に分かれた。


部屋に入るとミゼットの周囲だけ賑やかで他はお通夜モードになっていた。その中で、部屋に帰ってきたアレクに気づいたレイが話しかけてくる。


「アレク。お前どこ行ってたんだよ」


会場準備の後、急に居なくなったアレクを心配していたようだ。そんなレイに一言謝る。


「ごめんな。ちょっと用事があってね。それよりも朗報がある」


アレクはクラスの男子、特にお通夜な人に向かって言う。


「みんな聞いてくれ!」


その声にクラスの大半の人間は振り向いた。ミゼット達が何か言っているが、それは気にしないでおく。


「明日の親善パーティーだが、学院長の計らいで全員参加が可能になった」


アレクの言葉に部屋中がざわめきだす。「どうせ嘘だ」「信じられない」と言った声に、「本当か」「良かった」と安堵の声を出す者もいた。正直、信じないなら信じないでいい。信じる者は報われるべきであるが、最初から疑ってかかるのなら参加しなくていい。


ミゼット達は無視するアレクに対して何か言ってくるとも思ったが、つまらなくなったのか、黙っているだけだった。



翌朝、今日は親善パーティーの日だ。親善パーティーとは、後の競技大会に向けてのチームを探す場であるため、1日かけて行われる。1日と言っても6時間程度だ。主に前衛や物理攻撃を担う勇者学院、主に遠距離からの魔法攻撃を得意とする魔法学院、そして治療や聖なる加護でサポートする治癒学院、それぞれ1名づつ選出してチームを組むのが一般的であるが、同じ学院同士でチームを組む場合もある。なぜなら各学院で人数の差が大きいからだ。今回、勇者学院からは60名、魔法学院からは60名、治癒学院からは30名が親善パーティーに出席しているが、治癒学院の生徒が一番少ないため、サポーターを欠いたチームが少なからず存在するだろう。


パーティの形式は立食パーティーで、各学院の生徒が自分をアピールしたり、交流を深めたりしている。その中で、一人の少女がアレクに話しかけてくる。


「アレク!久しぶり」


勇者学院のルーナだ。お互い、制服姿を見せるのはこれが初めてだ。親善パーティーは、見た目で諸族がわかるように制服で参加になっている。


「やぁルーナ。久しぶりだね。もうチームは決まったのかい?」


アレクはルーナに返事をする。今日はレイも参加しているが、あちこちで食べまくっており、忙しそうに駆け回っている。


「ううん。私はまだ……。アレクは?」


「こっちもまだだよ。と言っても参加する気はないんだけどね」


アレクは作り笑いをして答える。魔法が使えない以上、どのチームに入ってもお荷物になるだけだ。それなら参加しない方がいい。


「じゃあ私と組もうよ!」


突然後ろから声がする。そちらを振り返ると見慣れたプラチナブロンドの髪の少女、となさんが居た。彼女は学年1位。つまり、1年生だけでチームを組む闘技大会において、魔法学院のトップという訳だが、そんな彼女がなぜか自分とチームを組みたがっているのは謎である。アレクがきょとんとしている間にルーナまで乗ってきた。


「じゃあ私も入れてもらおうかな」


「決まりね。貴女、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「私はルーナよ。アレクと同郷の知り合いよ」


「ルーナ、よろしくね。私はトゥナ、アレクとは……。一応学院で知り合った仲……かな」


となさんは少し歯切れが悪かったが、ルーナととなさんが結託し、アレクを含めたチームが完成した。無論、アレクの意思とは関係なく……。


「大丈夫。私がいるから心配しないで」


心配するアレクにとなさんが小声で話しかけてきた。彼女は魔法競技大会の事を知っている。つまり、アレクが魔法を使えないのを承知でチームを組むと言っているのだ。そして、次の言葉でアレクの退路は塞がれる。


「本番まで私が特訓してあげるから」


こうして、ルーナ、トゥナ、アレクのチームが誕生したのだった。

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