第23話 アレクの正体!

「すまないな。こんな部屋で」


陛下に謁見を申し込んで1週間、ようやく陛下との謁見が可能になったのだが、な話という事で、人払いをした客間の一角に5人は集まっていた。こんな部屋とは言うが、王宮の客間だけあって調度品も申し分ないし、装飾も施されている。


王宮からはライゼン・レグリット国王陛下、国王だけあって貫禄がある。猛々しい白銀の髪に鋭い黄色い瞳、彼の前では隠し事などできないだろう。その隣には美しいストロベリーブロンドのロングヘアで、藍色の瞳をした女性が腰を下ろしている。王妃リーナ・レグリット陛下だ。


彼らの前に謁見を許されたブラウン公爵家当主あるカイン・ブラウンと令嬢のトゥナ・ブラウンが歩みより、頭を下げる。カインの隣にはトゥナの知らない給仕服の女性が同じように頭を下げていた。


「腰を下ろしなさい。謁見の間でもないし、他に見とるもんもおらん。旧き友人としてで構わんよ」


「恐縮です。陛下」


カインはトゥナに座るように合図して自分も座る。トゥナはカインの隣に座った。反対側に給仕服の女性が座る。全員が着席した事を確認して、カインが陛下に用件を伝える。


「先日お話したアレックスに関する情報と、証人を見つけたので連れて参りました」


陛下の言葉を待たずに、給仕服の女性は自らの口を開く。


「お久しぶりです陛下。元王宮魔法師団所属、ミライズです」


その場に居たのはアレク達の孤児院、明るい未来園の園長ミライズだった。彼女の話は聞いていて胸が痛くなるような話だったが、私は最後まで聞く。


「カインより知らせを受けた時はまさかと思ったが……」


ライゼン殿下は顎に手をやり、神妙な顔をして言葉を詰まらせる。


「ええ。ミライズにしてやられました。当時、私もアレックスの捜索隊に加わった身、孤児院にも調査員を派遣しましたが、まさか容姿を変えて誤魔化していたとは……」


「ジョージの最期の頼みだったからね。それに王宮が安全とも限らないだろう。襲撃の実行犯は捕縛されたが、主犯は分かっていない。それに、ジョージが居ない以上、魔法の制御ができないアレックスは最悪殺されていただろう」


外部には公開されていないが、あの火事で見つかった焼死体は3だった。そのため、アレックスが生きていると考え、ライゼン陛下直轄の部隊及び、信用できる友人に捜索を依頼していたのだ。


対するミライズは王宮が動く事も想定し、アレックスの特徴的なの髪をアイスシルバーにし、逆立つ髪をきれいに整えた。瞳の色は魔眼を封じられた事で金色から藍色になっていたので、傍から見れば別人だ。そして、王宮に帰れば魔法を制御できないアレックスはただの危険人物になる。当然、刺客に狙われる可能性もあるし、国王自らその判断を下す可能性もあった。


「ミライズ!その言い方は失礼だぞ」


「よい。もしアレックスが危険で、国民が被害を被ると判断すればそうなった可能性もないわけではない」


ミライズの発言に対し、カインの口調が荒くなったが、ライゼンの一言で引っ込む。陛下には陛下の考えがあるのだ。それに口を挟む気はなかった。


「それで、カインよ。其方にはアレックスを闘技大会に出場させて欲しいと依頼をしていたが、此度の謁見はその件か?娘も連れてきたようだが……」


ライゼンがトゥナを見ながらカインに問う。


「それもありますが……。トゥナ、君から話しなさい」


先日の話はトゥナに一任してある。無論、それが今回の謁見の理由なのだからトゥナに発言を譲るのは当然だ。


「恐れながらも陛下、私から説明させていただきます」


……


…………


「なるほど。それでアレクという少年がアレックスだと分かったのか。彼の孤児院、つまりミライズの裏付けも取れたという訳か。カインの娘の魔眼が確かならいつ封印が解けてもおかしくはない」


それから少し考えてからライゼン陛下は続ける。


「闘技大会には私も観戦に行く。無論、リーナもな。もし、アレックスの封印が解け、手が付けられない場合は……」


「いいえ、陛下。心配には及びません。このトゥナ・ブラウン、アレックス・レグリットの婚約者として責任を果たします」


トゥナの強い決意はその場にいた誰もが感じ、陛下も言葉を飲み込まざるを得なかった。


「貴方の負けね、ライゼン。トゥナさん、アレックスの事、よろしく頼むわね」


こうして魔法闘技大会の件はトゥナに一任される事になった。王宮からの支援として、魔法闘技大会への参加を後押ししてもられる事になった。これでアレク……アレックスの記憶を取り戻す。トゥナ自身も闘技大会を利用して自分の目的を果たそうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る