第21話 帰省の理由!

「あ……れく……?」


考え事をしていると、レイが目を覚ます。医務室のベッドからゆっくり起き上がると、先程斬られた自分の手や体を確認していた。


「レイ。大丈夫か?痛いところは?」


「大丈夫……みたいだ。傷も治ってる。心配かけたな」


レイは攻撃を受けたところで気を失っていたため、何があったかはアレクからレイに説明した。


「そうか……。今度お礼しなきゃな……その2人とお前にも……」


「礼なんて良いよ。でも無茶な事はこれっきりにしてくれよ?彼女達が来なかったら今頃どうなっていたか分かんないんだからな」


「そう……だね。悪かった……」


少し休んでから医務室を出る。トゥナ達の姿は見えず、アリー先生から先に帰ったと聞かされた。夕食の時間は過ぎていたが、先生の口添えもあり、準備してもらっていたので、それを食べて部屋に戻る。


ミゼットと同じ部屋なのは正直嫌だったが、彼は先程の事が堪えたのか、静かに横になって休んでいた。翌日、トゥナとミーナにお礼を言うため、アレクとレイはAクラスを訪れるたが、2人は家庭の事情とかで学院を休んで帰省しているらしいと聞き、会えなかった。



トゥナとミーナは家庭の事情と称して、父親であるカイン・ブラウンに呼び出しを受けて帰省していた。


「先日の件、殿下より、此度の闘技大会も直々に観戦に行き、真実を確かめるとお言葉を頂戴した。そこで、トゥナ、ミーナのどちらかが彼とチームを組んで欲しい」


カインは自分のデスクに腰かけたまま、複雑そうな顔で2人の娘にそう告げた。もし、何らかの理由でが暴発すれば、一番に被害を受ける可能性が高い。本音を言うと、そんな危険な役目を自分の娘にさせたくはなかった。


の可能性がある以上、その役目は私が適任でしょう」


トゥナは即答する。その様子をみたミーナも答える。


「トゥナは彼にお熱みたいね。私も彼に興味が湧いてきたし、私がその役目を引き受けてもいいよ?」


トゥナはアレクが――アレックスだと確信していた。懐かしく思えるあの魔力、そして何度も感じてきた魔力の波動は無意識に眼が反応するほどだ。そんなトゥナを見ているとミーナが興味を持つには

十分な理由だった。


「ふむ……。それなら2人で話し合って決めなさい。それと、トゥナからも話があると聞いていたが、話せるならここで聞こう」


カインはトゥナの隣にいるミーナに目線をやりながらトゥナに言う。ミーナの前で話せる内容なら話せという意味だ。トゥナもそれを察して、話を始める。


「昨日、彼の友人がグリーン家の次男と私闘で怪我をしました。その際に彼は魔法を消し飛ばす程の魔力を放出して見せました。以前より、魔力が強まっていると私は感じています。おそらく、に匹敵するほどの……」


彼に匹敵する。この言葉が何を意味するのか分からないカインではない。彼と同類などこの世には存在しないのだから。そして、彼に匹敵するほどの魔力を放出できるとなると、封印はもうもたないだろう。闘技大会で何かあればそれこそ取り返しがつかなくなる可能性だってある。


「闘技大会の件は一旦保留にする。早急に陛下へ謁見できるように手配するので、それまでは屋敷にとどまるように。学院へは私から連絡しておく」


娘達から反論はなかった。話は以上だと伝えると、2人は部屋から退出した。1人になった部屋でカインは頭を抱えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る