第20話 ミーナVSミゼット!

「あなた達はこのミーナ・ブラウンがお相手します」


ミーナを囲うミゼットとその仲間合わせて5人。しかも、相手は上級生だ。そのうちの1人が声をかける。


「1人で俺らを倒せると思ってんのか?」


しかし、ミーナは余裕の表情を浮かべている。声をかけてきた上級生を挑発するように返した。


「あら?あなた達こそ、私に勝てると思ってますの?」


「舐めんなよ!」


その挑発に乗った上級生は顔を真っ赤にして杖をミーナに向ける。ミゼットとその仲間達も一斉に杖をミーナに向けた。


「攻撃!」


予め合図を決めていたのだろう。ミゼットが叫ぶと同時に6が詠唱を始めた。


「大いなる風よ、吹き荒れる風の突風ウインド・ブラスト!」

「勇猛なる大地よ、降り注ぐ岩の石礫ロック・ブラスト!」

「気高き炎よ、焼き尽くせ業火の炎ブラスト・ファイア!」

「清らかな水よ、荒波の如し水の暴流アクア・ブラスト!」

「大いなる風よ、万物を破壊し、吹き荒れろ風の暴風ウインド・ストーム!」

「清らかな水と大いなる風、交錯する力は零度の力、強固たる氷の絶壁アイス・ウォール!」


ミゼットと仲間達が放った魔法はすべてミーナに向かって行くが、ミーナを囲うように氷の壁が生成される。すべての魔法が氷の壁にぶつかり、土埃が舞う。


「やったか?」


土埃が晴れると、そこに残っていたのは無傷の壁だった。その壁は炎魔法ですら効いていないようだ。絶壁の中で少女が言う。


「あなた達の魔法じゃ、この程度です。これで正当防衛成立ですね」


ミーナは氷の壁を解除し、次の魔法を発動させるために詠唱を始める。


「水は大地の恵、風は大地の癒し、交錯する力は零度の力……」


詠唱を聞くだけで上級の魔法だと分かる。先程の攻撃で勝ち目がないと悟ったミゼットは杖を置いて降参を宣言した。他の4人にも目で合図を送る。


「や、やめてくれ!俺が悪かった。降参だ」


ミゼットが頭を下げる。ミーナは詠唱をするが、警戒は怠らない。少しでも怪しい動きをすると詠唱を再開するつもりだ。


魔力は維持したまま、ゆっくりとミゼットに向けた手を下ろす。それを見たミゼットの顔がにやける。


「大いなる風よ、吹き荒れる……」


「吹き荒れる氷の吹雪アイス・ブリザード!」


ミゼットの仲間が詠唱を終える前に、詠唱を再開したミーナの魔法が発動する。ミーナを中心に吹雪が吹き荒れ、ミゼットと仲間達を襲う。その吹雪の中で、もはや彼女の前に立っていられる者など残って居なかった。



「妹のミーナが相手をしているから多分……。あっ、ちょうど終わったみたいね」


ミーナがこちらに向かって歩いてくる。その後ろ――吹雪が吹き荒れた場所にはミゼット達5人が倒れていた。先程の吹雪で低体温になり、意識を失ったのだろう。


「ここに居ても面倒な事になりそうだし、医務室に急ぎましょ」


トゥナはミーナに向かって歩き出す。アレクもレイを背負って続く。ミーナと合流すると、4人で訓練場を後にする。去り際にトゥナさんが魔法をかけて、ミゼット達を回復させていたが、意識が戻る前に立ち去った。


今は、レイを医務室のベッドに寝かせ、アレクが付き添っている。トゥナとミーナは事のあらましを医務室のアリー先生報告しに行っていた。


アレクは今日の事を振り返り、1人後悔していた。その表情は暗い。自分に力があればレイを傷つける事はなかったし、彼女らが助けに来なかったら今頃どうなっていただろう。


力が欲しい――


大切な友人を守れるだけの力――


大切なを守れる力を――


アレクの血が昂る。さっきの……レイの血を見た時もそう言えば……。あれはなんだったんだろう……)


アレクは先ほどの事を思い出そうとするが、あんな光景見覚えがなかった。一瞬脳裏に浮かんだ影を見て意識が飛んでしまった。しかし、はっきりと脳裏に焼き付いた記憶……。


その真実に気づいた時、封印された過去への扉は開く。その時は確実に迫っていた。

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