第19話 無意識の魔法!

目障りな2人をとミゼットが魔力を高めていく。彼の持ち得る最強の魔法を放つ。


「大いなる風よ、万物を破壊し、吹き荒れろ風の暴風ウインド・ストーム!」


ミゼットが放った暴風がアレクとレイを襲うべく迫って来る。


(やらせない!)


(失いたくない!)


(もう……二度と……)


アレクは無意識のうちにありったけのを迫り来る風の暴風ウインド・ストームに向かって放つ。魔力の奔流が暴風と衝突し、ミゼットの魔法が消し飛んだ。


「なっ!?」


消えた魔法を見て、ミゼットが驚きを見せる。自分の使える最強の魔法を無能に無力化されたのと、何が起こったのか分からないのとで、彼は激しく動揺した。


「そこまでです!」


ミゼットが動揺している最中、2人の少女が姿を現す。普段なら、その美しい容姿に思わず見惚れてしまいそうになるが、ミゼットにそんな余裕はなかった。彼女らの実力を測る余裕すらも……。


「だ、誰だ、お前達。そ、そうか、無能の仲間だな。分かったぞ、今のもお前らの仕業だな?」


突然現れた2人に魔法を消されたと勘違いをしているようだが、彼女らにはどうでも良かった。むしろ今はアレクの方が心配だからだ。しかし、ミゼットにとっては無視できない相手だった。1人では勝てないかもしれないが5なら勝てるだろう。


ミゼットが手で合図し、後ろに控えていた4人の仲間が彼女らを取り囲むように移動する。


「とな。ここは私に任せて」


「うん。お願い」


となと呼ばれた少女は包囲が完了する前にアレクの方へ走り出す。仲間が追いかけようとするが、それをミゼットが止める。


「いい。先にこいつを始末して、次にあいつらだ」


自ら1対5を選ぶなんて大した自信だが、ミゼットにとっては好都合だった。なぜなら彼の仲間もまた、それなりの実力を持つ上級生だからだ。それに臆する事なく少女は言う。


「あなた達はこのミーナ・ブラウンがお相手します」



トゥナはアレクの元へ駆け寄る。ちなみに彼女の眼はすでに金色に輝いていた。アレクの魔力はとても不安定で、いつ暴発してもおかしくない状態だった。それに先ほどの魔力放出はトゥナの魔眼が反応してしまうほどにとてつもない密度と濃度で、先日の職員室以上だ。


「大丈夫?」


トゥナはアレクに声をかけるが、反応がない。目は開いているが、明後日の方向を見ている感じだ。トゥナはアレクの肩をゆすり呼びかける。


「アレク。アレクッ!」


「んっ……。あれ……、と、となさん?」


アレクが正気に戻る。彼が正気に戻った事で、不安定だった魔力が落ち着きを取り戻していく。これで一安心だ。


「一体何があったの?」


一部始終は見ていたが、見ていた事を悟られないため、彼に問う。


「レイが傷ついて、それで気が動転したんだと思う。それより早くレイを医務室に連れて行かないと……」


アレクの話を聞いて、レイの状態を確認する。脈もあるし、呼吸も大丈夫。出血は両腕の傷からだけみたい。身体は制服に守られたみたいだけど、こっちはダメだったみたいね……。


「聖なる光よ、安らぎと癒しを与える治癒の光ヒール


トゥナの魔法でレイの傷が治っていく。あとは気を失っているだけなので、心配はない。アレクも魔力が安定しているので、魔眼を閉じる。


「これで大丈夫よ。念のため医務室に連れていきたいけど……」


「あ、ありがとう……。医務室には俺が運ぶよ」


そう言ったアレクだが、入り口側はまだ戦闘が続いていた。


「あっちは大丈夫なんですか……?」


「妹のミーナが相手をしているから多分……」


その時、ちょうど戦闘が終わったようだ。

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