第16話 レイの決意!

夏が終わり、競技会の熱気は収まって来た学院であるが、秋季には次のイベントがある。他院との交流がある闘技大会だ。闘技大会と言っても1対1ではなく3対3のチーム戦。他院の生徒とチームを組むも良し、自分たちだけでチームを組むも良しとされているが、前衛を欠く魔法使いのチームや回復や魔法を欠く前衛チーム、どちらも弱点が見えており、脆い。闘技大会前に開かれる学院親善パーティでチームを組む相手を探すのが恒例となっている。闘技大会は競技大会と違って参加が義務ではなく、期日までにチームを編成し、参加登録書を提出する自由参加型だ。 夏季休暇が終わり、秋季闘技大会が近づくある日、事件は起こった。


朝のホームルームの時間となり、担任のガーネットが教室に入ってくる。


「あー、全員揃ってるな。今日は闘技大会の伝達がある。今年の闘技大家は全部で20チームに決まった。うちのクラスから闘技大会に参加する生徒はミゼット、アリス、シルットの3人に決めた。辞退したい者は申し出るように。以上だ!」


それだけ言うと、ガーネットは教室を去ろうとする。それに待ったをかけた生徒が居た。


「ま、待ってください先生!闘技大会はチームを編成すれば参加は自由だと聞いていますが……?」


「ん?有象無象が参加しても意味ねーだろ?雑魚なんかがチーム組んでも他の学院の生徒に迷惑だしな。こっちで闘えそうなやつを選んでやってんだ。毎年毎年参加者が多くてな。最初からこっちで減らす事にした。どうしても参加したいって言うんなら実力で示せ。親善パーティは2週間後、期日はパーティの翌日までだ」


そう言うと今度こそガーネットは教室を出ていく。周囲がざわついている。納得する者、嘆く者、ミゼット達を称える者、皆様々な反応を示していた。そんな彼らだったが、ミゼットの言葉で一瞬、静けさが戻ってくる。


「はははっ。先生の言う通りだぜ。俺だって雑魚ばっか相手にしてらんねーもんな」


そしてその静寂を破ったのは先ほどガーネットに口答えした生徒だった。


「なんだと!偉そうにしやがって…」


ミゼット後方の席から男子生徒が1人立ちあがり、そのまま歩いてミゼットの前に出て来る。


「事実だろ?それともお前は俺に勝てるって言うのか?」


「んだよ!やってみないと分かんねーだろ!」


男子生徒とミゼットの間に不穏な空気が流れる。アリスがそれを止めに入ろうとするが――


バキッ、ドゴッ!


「ぐっ……」


男子生徒は背後から近づいてきた生徒――ミゼットの取り巻きの一人――に殴られ、教壇に向かって倒れこむ。


「大いなる風よ、吹き荒れる風の突風ウインド・ブラスト!」


そこにミゼットが放った魔法が彼を襲う。飛ばされた彼は壁に衝突して気を失った。


「見ろよ。口ほどにもないぜ」


ミゼット達はその生徒を見て笑っている。それを見て立ち上がったのは――


レイ?


「お前らいい加減にしろよ。学院内で私用に魔法を使うのは禁止だろ。それに今の不意打ちは卑怯だ!」


「はっ!無能とつるんでる奴じゃないか。お前も吹き飛ばされたいか?」


「なんだと!」


今度はミゼットとレイの間に一触即発の雰囲気が漂う。どちらも動こうとはしないが、その間にアリスが倒れた生徒に近づき、数名で医務室に運ぼうとしていた。両者睨みあったままの体勢で沈黙が流れる中、突如、教室の扉が開く。


「お前ら席に着けよ。授業を始める」


教師が入ってきたため、ミゼットの周りに集まってきていた取り巻きが全員が自分の席に向かっていく。アリスは医務室に向かった生徒の事を教師に報告しているようだった。そしてミゼットは――


「放課後相手してやる」


レイにそう告げ、席に着く。レイも頷き返して席に着いた。こうして彼らの戦いが始まる。



「レイ……本当に大丈夫か?」


昼食時に、アレクは今朝あった騒動と放課後の果し合いについてレイに聞いていた。勢いでやってしまったとはいえ、相手はあのミゼットだ。見下すレイ相手に正攻法で来るとは限らない。それに、万が一怪我でもしたらと考えるとアレクも黙っては居られなかった。


「策はあるさ。俺も風魔法が使えるんだぜ?あいつの風を操ってしまえばこっちのもんだ」


レイは水魔法に加え、風魔法も扱えるようになっているが、それでも魔法力、魔力量いずれもミゼットに劣っている。魔法経験的にもミゼットに分があるだろう。ちなみにミゼットはあの後、アリスから一部始終を聞いた教師が担任に伝えたのか、ガーネットに呼び出しを受けていた。こってり絞られると良いが、あの教師のことだ、それはあり得ないだろう。


「お前は来るなよ」


そんな事を考えてるとレイから考えてもなかった言葉が発せられた。


「な、なんで……」


「もし、俺が負けたらお前もひどい目に会うかもしれない」


それだけ言うとレイは食堂から去っていった。レイも分かっているのかもしれない。自分が負けるかもしれない事を……

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