第35話

☆☆☆


ファミレスを出た3人は近くの公園のベンチに座り、当時の事故について調べることにした。



スマホで検索してみると、小池先生が言っていた通りの事故の記事が出てきた。



≪昭和○○年、8月15日。



北中高校のバスケ部部員、18名を乗せたバスが××山の山中で横転、崖下へ転落。



この事故で6名の生徒が死亡した。



バスはバスケ部の合宿所へ行く途中で、当時天候が悪く……≫



「ユキオさんだけあの場にとどまっているのはどうしてなんだろう」



梓は呟く。



事故は本当にあった。



だけどそれは隠ぺいされたわけでもなく、ちゃんとニュースとして残っている。



犠牲者の名前も載っていて、葬儀もちゃんと執り行われたことだろう。



「やっぱり、バスケに執着してるんじゃないかな? ユキオさんはプロになりたいと願って合宿に参加した。だけどその夢の途中で命を落としてしまったからとか?」



玲子の言葉に梓は首をかしげた。



その考えが一番妥当かもしれない。



でも、そうなるとユキオさんがどうして北中高校へ入学したのかという疑問が残る。



「うちの高校はプロを目指すような部活はしてないよね?」



梓の言葉に玲子が「あっ」と声を出した。



「そうだったね……」



「県の試合で上位へ食い込んでも、それ以上に行ったことはない。プロを目指すなら、他の高校に入学するよね」



「じゃあ、ユキオさんは夢半ばで亡くなったわけでもないってことか……」



玲子は考え込んでしまった。



なにか、自分たちが調べただけではわからないものがあるのだろう。



「もう1度、部室へ行ってみよう」



そう言ったのは厚彦だった。



「部室って、今から?」



梓は驚いて聞く。



「あぁ。せっかくここまでわかったんだ。もう少し調べよう」



いつにも増して熱心な厚彦。



梓は厚彦の提案を玲子に聞かせた。



「そうだね。行ってみてもいいかも」



玲子も行く気満々だ。



こうなると2対1で梓1人が不利になってしまう。



梓はしぶしぶ「わかった。行こう」と、ベンチから立ち上がったのだった。

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