第15話

☆☆☆


「梓、目の下まっ黒だけどどうしたの?」



登校してすぐ、挨拶も抜きに玲子が駆け寄ってきた。



「うん……ちょっとね……」



厚彦のせいで眠ることができなかったとは言えない。



今でも厚彦の声が脳内にこびりついていて、頭が痛くなってきている。



「眠れなかったの」



「うん。全然」



隣りに立つ厚彦を睨みながら返事をする。



しかし、厚彦は涼しい顔で窓の外を眺めている。



「1時間目から体育だけど、大丈夫?」



「あ、そうだっけ……」



黒板の横に張られている時間割を確認すると、確かに1時間目から体育が入っている。



この寝不足の状態で体を動かすのは得策ではなさそうだ。



「しかも休めないよ」



休むから大丈夫だと言おうとしたところ、先に玲子に言われてしまった。



「え?」



「忘れたの? 今日はスポーツテストの初日だよ?」



(あ……)



そうだった。



あれこれあってすっかり失念していたが、今日と明日はスポーツテスト期間なのだ。



休んだら点数を付けてもらえない。



それか、後日再テストという形になる。



しんどいけれど出るしかなさそうだ。



「無理はしないから大丈夫だよ」



梓はそう答えるしかなかったのだった。

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