Ⅲ.雪丸 ⑧
「ごきげんよう、ホワイトノーツの皆さん。暑いですね、今日は! そして涼しいですね、ここは!」
ゲーム対決企画の撮影当日である、八月五日の午前十一時。俺は事務所に入ってきた雪丸さんの格好に目を瞬かせつつ、香月社長や由香利さんと共に挨拶を返していた。袖を捲ったワインレッドのシャツにブラックのスラックス、そしてスニーカーというところまでは分かるのだが……何故つば広の麦わら帽子を被っているんだ? スニーカーは『ミスマッチのお洒落』の範疇だけど、麦わら帽子までいくと普通に変だぞ。
「おはようございます、雪丸さん。今日はよろしくお願いいたします。」
「やあ、雪丸君。よく来たね。こっちがマネジメント担当の駒場君で、そっちが営業担当の風見君だよ。」
「風見です。よろしくお願いします。」
「……誰も麦わら帽子には突っ込んでくれないんですね。自信があったんですが。」
ああそれ、突っ込まれたかったのか。残念そうな苦笑いで帽子を脱ぐと、雪丸さんはこちらに歩み寄りながら話を続けてくる。ちなみに背負っているリュックはフォーラムの時にも見た、女児向けのアニメキャラがプリントされてあるやつだ。あれも突っ込み待ちなんだろうか? 判断が難しいぞ。
「今日は場所をお借りします。ゲームとなると私は機材を持っていないので、準備してもらえるのは非常に助かりました。ありがとうございます、ホワイトノーツ!」
「どういたしまして。……それ、君の『素』なのかい?」
大声で堂々とお礼を言った雪丸さんは、香月社長が尋ねたのを受けて迷わず首肯してきた。素なのか。じゃあやっぱり変な人ではあるらしいな。
「今日はややテンションが高めかもしれませんが、私は生まれた時からこの性格です。キャラクターを演じたりはしていません。楽しそうな人生でしょう? 実際楽しくて仕方がありませんよ。」
「それはまあ、何よりだ。今日の撮影も楽しんでいってくれたまえ。」
「ええ、そうさせていただきます。しかし私だけが愉快なのは少々気が咎めるので、ホワイトノーツの皆さんにも幸せをお裾分けするためにささやかな手土産を──」
そこまで語ったところで急に口を噤むと、雪丸さんは何も持っていない自分の右手を見て、左手を見て、フッと笑ってからカッコよく肩を竦めてくる。
「道中買ったんですが、どこかに置き忘れてきました。恐らく地下鉄の座席に置きっぱなしになっていますね。というわけで、皆さんには気持ちだけ受け取っていただきたい。車で来れば良かったと後悔しています。」
「……フォーラムの日にも思ったんだが、君はちょっと抜けているらしいね。」
「そこもまたチャーミングでしょう? さくどんさんとモノクロシスターズさんは到着していますか?」
「そっちの部屋に居るよ。撮影には駒場君が協力するから、扱き使ってやってくれたまえ。」
手土産を地下鉄に置いてきてしまったのか。大胆不敵な中にぽんこつな部分を併せ持っているあたりも、我らが香月社長とちょっぴり似ているな。その社長の声に従って進み出た俺に、雪丸さんは右手を差し出してきた。
「よろしくお願いします、駒場さん。貴方はフォーラムの撮影の時、即座に画角の外に移動していましたね。実は感心していたんです。お陰で編集が楽になりましたよ。」
「あー……はい、光栄です。今日も良い撮影が出来るように努力していきますので、何かあれば遠慮なく言い付けてください。」
「これはこれは、殊勝な発言じゃありませんか。私はさくどんさんの『敵』ですよ? そんな女にかける言葉とは思えませんね。」
「……本当にそうなら、ああいった動画の構成にはしないはずです。」
既にアップロードされているフォーラムの日に撮影された動画は、先日夏目さんが口にしていたように限りなく『フェア』な編集が施されていたのだ。握手をしたままで指摘してみれば、雪丸さんはニヤリと笑いながら返答してくる。
「おや? 社長が傑物なら社員もそうだということですか。……ホワイトノーツ、やはり侮り難し!」
「……どうも。」
ついて行けないぞ、そのテンション。一般人の俺を香月社長や雪丸さんの仲間に入れないでくれ。来訪者の台詞にうんうん頷いている香月社長を尻目に、撮影部屋のドアの前まで移動してから雪丸さんへと声をかけた。
「さくどんさんやモノクロシスターズのお二人はこの中です。……帽子と荷物を預かっても大丈夫ですか?」
両手を差し出した俺の言葉を耳にして、ちらりとドアの横に置いてある二脚のゲーミングチェアに目をやった雪丸さんは……うーん、察しが良いな。これから何が起こるのかをぼんやりと把握したらしい。苦笑しつつやれやれと首を振ってリュックと帽子を預けた後、うなじで結んであるストロベリーブロンドの長髪を整えてから応じてくる。
「なるほど、なるほど。……私のタイミングで入っても?」
「ノックをしてからどうぞ。」
「では、そうすることにしましょう。」
スッと横に退けた俺へと応答してから、雪丸さんが三度丁寧にノックをしてドアを開くと──
「ごきげんよう、雪丸で──」
「来ましたね、雪丸さん! この前はびっくりしちゃって微妙な反応になっちゃいましたけど、今回は万全の準備を整えてきました! 勝負です! 私、負けませんから!」
中から夏目さんにしては大きめの声が響いてきた。要するに『いきなりの撮影』をやり返す形で、改めて挑戦を受け直そうというわけだ。そのために雪丸さんを撮影部屋に上手く誘導して欲しいと、予め夏目さんから頼まれていたのだが……おー、雪丸さんの方もハイテンションで答えているな。カメラの画角に入ってしまうので覗き込めないけど、室内の様子が目に浮かぶようだぞ。
「素晴らしい! 素晴らしいですよ、さくどんさん! それでこそ我が好敵手です! 事務所に所属した貴女が腑抜けていないかを、この勝負を通して確かめさせていただきます!」
「腑抜けてなんかいません! 私は事務所に所属して前よりも強く……そう、『ニューさくどん』に生まれ変わったんです! 前の私だったら雪丸さんに勝てなかったかもしれませんけど、今なら勝てます!」
「ならば本気でかかってきてください! こちらも全力でお相手しますよ! 何事にも全力投球。それがライフストリーマーですからね!」
二人の『掴み』が終わった後、一拍置いて小夜さんの冷静な声が聞こえてくる。事前の打ち合わせ通り、このままモノクロシスターズからのルール説明に入るらしい。
「それじゃあ、えっと……私たちモノクロシスターズが『立会人兼介添人』としてお二人の今日の勝負を見届けますね。私小夜が雪丸さんチーム、こっちの朝希がさくどんさんチームでそれぞれのプレイをフォローしていくので、どうぞよろしくお願いします。」
「やるゲームは『カウントフューチャー4』です! 二十五ターンの一本勝負で、マップは『ゴールデンキングダム』でやっていきます! そこが一番逆転要素が多くて、対決が盛り上がるマップだと思うので!」
「私は雪丸さんが勝てるように、朝希はさくどんさんが勝てるようにプレイしますから、分からないことがあれば私たちに聞いてください。ただし対決の勝敗自体はチームの合計順位じゃなくて、雪丸さんとさくどんさん個人の順位で決定します。……問題がないなら準備に入りますけど、大丈夫そうですか?」
ちょっと緊張している声色の小夜さんの問いかけに対して、雪丸さんと夏目さんが返事を放つ。少し頼りない内容の返事をだ。
「テレビゲームに詳しくない私には、何がなんだかさっぱり分からないので……モノクロシスターズさんたちに全てお任せします!」
「私も全然分かりませんけど、朝希ちゃんと小夜ちゃんが準備してくれたならきっと大丈夫です! それでお願いします!」
「……じゃあ、試合会場の準備に入ります。」
小夜さんが何だか不安そうな声で締めた数秒後、ひょこりと部屋から顔を出した朝希さんが俺にカットを告げてきた。これにてオープニングは終了か。夏目さんが組み立てた『ざっくり構成』によれば、次は準備を終えた後のゲームのタイトル画面からだな。……ちなみに対決企画そのものの説明は雪丸さんの到着前に三人で撮ったので、フォーラムの動画を見ていない視聴者が置いてけぼりになる事態は避けられているはず。
「もう出てきてオッケーですよ、駒場さん。」
「それでは、テーブルとソファを運び入れますね。」
「手伝います!」
スペースを確保するために、最初のシーンを撮影した後で運び込もうという話になったのだ。協力を申し出てくれた朝希さんと二人で応接用ソファとテーブルを撮影部屋に運んだところで、テレビ横の三脚の前で話している夏目さんと雪丸さんの姿が目に入ってくる。残る小夜さんは配線の最終チェックをしているらしい。
「じゃああの……改めて今日はよろしくお願いします、雪丸さん。」
「こちらこそよろしくお願いします、さくどんさん。このカメラで私たちの姿を撮って、編集でゲーム画面に付け足すんですか?」
「はい、そうなります。右側のソファに私と朝希ちゃんが座って、左側のソファに雪丸さんと小夜ちゃんが座るって形です。なのでこっちのカメラで私たちを、逆サイドのカメラで雪丸さんたちを撮ろうと思ってるんですけど……それでいいでしょうか?」
「メールでの説明通りですね。それで問題ありませんよ。一応私もビデオカメラを持ってきたんですが、必要なさそうですか?」
つまるところテレビの前にマイクを載せた応接用テーブルを置き、その後ろに二人掛けのソファを二台並べて、チーム毎に座ってプレイするわけだ。俺と朝希さんがソファやテーブルの位置を調整している間にも、夏目さんと雪丸さんの会話は進行していく。
「二台用意してますけど、雪丸さんのカメラの方が性能が良いかもしれません。こっちがホワイトノーツの備品カメラで、こっちが私のやつです。」
「ああ、HDSシリーズの2009年モデルですか。私も昔使っていましたよ。今は同じシリーズのこの前出たやつを使っていますが。」
「あっ、はい。2011年モデルの紹介動画、見ました。私も買おうか迷ったんですけど、来月出るdIVSの新型も気になってるので……比較してから決めようと思ってます。」
「さくどんさんは慎重ですね。広角に強いのは確かにライフストリーマーにとって魅力的ですが、『次』を期待して買い控えているとキリがありませんよ? カメラは欲しいと感じた時が買い時なんです。」
話が脱線しているような気がしないでもないが……やっぱりこう、ライフストリーマー同士だと共通の話題で盛り上がれるらしい。ぎこちなさは若干残っているものの、夏目さんが心配していたような空気にはなっていないな。今朝家に迎えに行った時の車内で、彼女は『上手く話せるか不安です』と弱音を漏らしていたのだ。
まあ、俺はそこまで案じていなかったぞ。夏目さんも雪丸さんも日本における『職業ライフストリーマー』の先駆けなのだから、何をどうしたって話は合ってしまうだろう。動画のスタイルや目指す場所が異なっているとしても、共通している部分は山ほどあるはずだ。
割とスムーズに喋っている二人のことを眺めていると、立ったままで自分のパソコンを弄っていた小夜さんが報告を寄越してくる。二人の椅子を外に出したのも、少しでも広い空間を確保するためだ。もっと大きな部屋を用意してあげたいのは山々なのだが……今回はまあ、騙し騙しやっていくしかないな。動き回ったりしないゲーム実況であれば何とかなるはず。
「画面のキャプチャーは問題なさそうです。マイクもちゃんと録音できてます。」
「テストした甲斐がありましたね。……雪丸さん、少しよろしいでしょうか?」
「どうしました? 駒場さん。」
「ゲーム画面は小夜さんのパソコンに録画して、皆さんの顔はさくどんさんが言うようにビデオカメラで撮るんですが、音声に関してがやや複雑になっていまして。ビデオカメラ側とマイクで二重に録音することになるんです。」
「二重に? ……つまり、編集の段階で選べるわけですか。そういうことなら大歓迎ですよ。」
理解が早いな。一瞬考えただけで意味を認識した様子の雪丸さんに、念のため詳しい説明を投げた。カメラにショットガンマイクを付けたり、ピンマイクを各々の胸元に装着するのが理想なのだが、そんな機材は当然所有していない。なのでモノクロシスターズが普段使っているマイクで録音することになったのだ。さすがにビデオカメラの内蔵マイクよりは綺麗に録れるし、ダブルで録音しておけばもしもの時の保険にもなるはず。
「はい、その通りです。恐らくマイク側の方が綺麗に録音できるので、そちらを使用したい場合は編集の時点でビデオカメラ側の音を調節してください。雪丸さんの方で編集の面における問題がないのであれば、そういう形で録りたいと考えています。」
「構いませんとも。無問題ですよ。……前半をさくどんさんが上げて、後半を私のチャンネルで上げるんですよね?」
「その予定です。モノクロシスターズのお二人と私たちで三度ほどテストプレイをしてみたんですが、二十五ターンだと二時間弱で決着が付きました。話しながらやった場合はもう少しかかるかもしれないので、動画の素材としてはそれぞれ一時間強ということになりますね。」
「それはそれは、ホワイトノーツとモノクロシスターズさんの手厚いサポートに感謝しますよ。六時間もテストに使ってくれたんですか。」
まあうん、色々と懸念要素があったのだ。キャプチャーして撮るのは初めてだったので小夜さんは動画のサイズやパソコンの負荷を心配していたし、慣れていない二人が参加するとなると一回にかかる時間が未知数だったし、ビデオカメラやマイクの距離も探り探りだったし、編集してみて不都合がないかも不安だった。実際はターン数を変えたりマップを変えたりもしたので、もうちょっとかかっているぞ。
素材の時点で一時間は長めかもしれないが、十ターンや十五ターンだとやや物足りない感じになってしまいそうだったから……一本ずつならやはり二十五ターンがベストだな。もっとちょうど良いはずの二十ターン設定はカウントフューチャーのシステムに存在していないようだし、現状だとこれが最適解だぞ。来春発売の続編で実装されることを願っておこう。
次回作への要望が頭をよぎったタイミングで、雪丸さんの感謝に朝希さんがピースサインを突き出しながら応答する。いつも通りの元気な笑顔でだ。
「楽しかったから大丈夫です! 駒場さんとも、香月さんとも、風見さんとも沢山遊べました!」
「……動画で見ている時にも思いましたが、朝希さんは随分と可愛らしい方ですね。連れて帰りたいくらいですよ。貴女も雪丸チームの一員になりませんか?」
「嬉しいけど……でも、ダメです! 私はさくどんさんの仲間なので。」
「おっと、振られてしまいましたか。であれば私は朝希さんの分まで、小夜さんを可愛がることにします。……勿体無いですし、こういう話は動画内ですべきですね。早く撮影を始めましょう。」
『勿体無いから動画内で』か。夏目さんも同じようなことを言っていた覚えがあるぞ。そんな雪丸さんの促しを受けて、全員で撮影環境を整えていく。確かに動画外で交流を済ませてしまうのは勿体無いな。そういうやり取りが『コラボ動画』の魅力の一つなのだから。
使うカメラをホワイトノーツの備品と雪丸さんが持ってきた物に決め、二つのマイクを二台のソファの前に置き、小夜さんがタイトル画面をテレビに映し、由香利さんが飲み物を準備してくれたところで……よしよし、準備完了だ。いつでも始められるぞ。
「これでオーケーですね。私はこっちで見ていますので、『スタッフ』の手助けが必要な時は呼びかけてください。」
画角に入らない部屋の隅。そこに置いたオフィスチェアを指しながら言ってやれば、ソファに座っている四人のライフストリーマーたちが順番に返答してきた。
「はい、分かりました。よろしくお願いします。」
「駒場さん、見ててね。私、一位になるから!」
「あんたが目指すべきはさくどんさんの勝利でしょうが。……駒場さん、たまにパソコンの方もチェックしてくださいね。大丈夫なはずですけど、録画が止まったりしたら大変ですから。」
「画面すら見えない位置で二時間も監督するとは……恐れ入りますよ、駒場さん。マネージャーというのは案外キツい仕事のようですね。」
最後に声をかけてきた雪丸さんへと応じつつ、二台のビデオカメラの録画ボタンを押す。退屈に見えるかもしれないが、この視点から楽しめるのはマネージャーだけだ。そう思うとむしろ得をしている気分になってくるぞ。
「私のことは風景の一部とでも思ってください。それがスタッフという存在なんですから。……録画開始しました。どうぞ。」
断ってから椅子に腰掛けると、夏目さんが深呼吸した後で大きく三回手を叩いて……あれは多分、編集の際に二台のカメラの映像やマイクの音声を同期させるための合図だな。手を叩いて新たなパートをスタートさせた。前半はさくどんチャンネルで上げるから、主導は夏目さんだ。雪丸スタジオの視聴者たちも見るだろうし、今度こそ『さくどん』の魅力を出していって欲しいぞ。
「はい、そんなわけで準備が整いました。こういう環境での撮影も、ゲーム実況自体も初めてなのでちょっと緊張してます。では、えー……朝希ちゃん、スタートボタンってどれですか?」
「これです、ここ。」
「……さくどんさん、頼みますよ? スタートボタンくらいは私にも分かります。これでしょう?」
「あの、雪丸さん? それはセレクトボタンですね。スタートボタンはこっちです。」
うーむ、モノクロシスターズが参加してくれて本当に良かったな。夏目さんと雪丸さんだけだと、かなりぐだぐだな実況動画になっていたかもしれないぞ。テストに付き合ってくれた香月社長も相当な『ゲーム音痴』だったわけだが、二人はそれを上回って……というか、下回っているらしい。この調子だと小夜さんと朝希さんの操作説明が頻繁に挟まるだろうし、想定以上に時間がかかりそうだ。
───
そして撮影開始から一時間半ほどが経過した、午後一時ちょっと前。俺は夏目さんが前半の動画を締めているのを横目にしつつ、画角外で小夜さんのパソコンの状況を確認していた。もちろんまだまだ余裕はあるが、前半だけで結構な容量になってしまったな。これに加えてビデオカメラのデータもあるわけだし、やっぱりゲーム実況というのはハードディスクの容量を食うジャンルらしい。
「──から、後半で何とか巻き返していきます! 後半の動画が上がってる雪丸スタジオと、手助けしてくれたモノクロシスターズの二人のチャンネルは動画の下の概要欄に載せておきますので、そっちの二つのチャンネルにも登録していただけたら嬉しいです。ではでは、ばいばいっ。」
「またすぐに会いましょう、さくどんチャンネルの諸君!」
「ばいばいっ!」
夏目さんに合わせて雪丸さんと朝希さんが一言添えて、小夜さんがぺこりと一礼したところで……カットかな。開始の時より弱めにぺちりと手を叩いた夏目さんが口を開く。
「はい、一先ず休憩ですね。お疲れ様でした。」
「三人ともお疲れ様です。……ゲームというのも中々疲れるじゃありませんか。私にしては少々はしゃぎ過ぎたかもしれませんね。」
「でも、さくどんさんと雪丸さんは接戦です。これなら後半も盛り上がると思います! ……小夜ち、パソコン大丈夫そう?」
「ん、何とか平気そうよ。新しいCPUが欲しくなる温度だけど、落ちるほどではないわ。……こっちの録画、一旦切りますね。」
すぐさまパソコンのチェックを始めた小夜さんに場所を譲って、二台のビデオカメラに歩み寄って録画を止める。こっちも切っておこう。後半は雪丸スタジオの担当だから、カードを雪丸さんのやつに交換しないとだな。『テープチェンジ』だ。
「カメラも切りますね。いい時間ですし、昼食を食べてから再開しましょう。」
「そうですね、ちょっとお腹が空きました。……朝希ちゃん、ゲームはこのままにしておいていいんですか? 放っておいたら消えちゃったりしませんよね?」
「しません、大丈夫です。」
十三ターン目で止まっているゲーム画面を指差して問いかけた夏目さんに、数々の質問を受け続けた結果『回答慣れ』してしまった朝希さんがきっぱりと答えた後で……雪丸さんが腕を組みながら声を上げた。悩んでいるような顔付きだ。
「……この際昼食の様子も撮って、モノクロシスターズさんのチャンネルで上げるのはどうでしょう? つまり、四人で軽くトークをしながら食事する動画を。」
「私たちのチャンネルでですか?」
「予想以上に手助けしてもらっているので、さすがに申し訳なく思えてきたんですよ。さくどんさんが一本、私が一本、そしてモノクロシスターズさんでも一本。そうすべきじゃありませんか?」
「……小夜ち、どう?」
朝希さんが判断をぶん投げたのに、マウスを操作していた小夜さんがかっくり首を傾げて反応する。
「私たちとしてはまあ、願ってもない話ですけど……いいんですか? 動画に出させてくれるだけでも充分ですよ?」
「撮影環境を作ってくれて、入念なテストをしてくれて、かつ動画内でも補佐してくれているわけですからね。返す当ての無い借りを作るのは趣味ではありませんし、こちらも協力するのが礼儀というものですよ。……どうせ撮るなら、ついでにちょっとしたゲームをしましょうか。じゃんけんで負けた一人が、この蒸し暑い中歩いて昼食を買いに行く。それでどうです?」
ピンと人差し指を立てて即興の企画を提示した雪丸さんへと、夏目さんがちらりと窓の方を見ながら応答した。やる気満々の日光に照らされているカーテンの方をだ。時間も時間だし、外は地獄の暑さだと思うぞ。
「……私はいいですよ。朝希ちゃんと小夜ちゃんへのお礼になるなら受けて立ちます。」
「それでこそですよ、さくどんさん。……小夜さんと朝希さんも構いませんか? 負けた人物がカメラを持って買いに行って、それを食べながらライフストリームについてを語り合いましょう。」
「まあ、はい。さくどんさんと雪丸さんの『撮影裏トーク』っていうのは伸びそうですし、撮らせてもらえるならありがたい限りです。……駒場さん、カメラをお願いできますか? SDカードはこっちにあります。」
「了解です、任せてください。」
唐突に追加の撮影が決まってしまったわけだが……モノクロシスターズとしては間違いなく良い話だし、俺としても文句は無いぞ。ゲーム実況チャンネルにいきなり雑談動画を上げるのは少し不安だけど、そういう内容ならさくどんチャンネルや雪丸スタジオの視聴者も見てくれるはずだ。
小夜さんからSDカードを受け取ってカメラに挿入していると、分かり易く『思い付いたぞ!』という顔になった朝希さんが声を放つ。ソファから勢いよく立ち上がりながらだ。
「それならもっと面白く出来ます! 待っててください!」
『もっと面白く』? 謎の発言と共にドアを開けて事務所スペースに移動していった朝希さんを見送りつつ、どの角度から撮ろうかと立ち位置を調整していると……すぐに戻ってきたモノクロシスターズの元気担当どのが、満面の笑みでビニール袋を掲げて発案してきた。それ、例の『パンドラのビニール袋』じゃないか。
「負けた人は、耳と尻尾を付けて買い物に行くことにしましょう。そっちの方が罰ゲームっぽいです! あと、語尾も!」
「耳と、尻尾? ……どういう意味ですか? 朝希さん。」
「えと、これです。これを頭と腰に付けて、語尾をにゃんとかわんにしてご飯を買ってくるのはどうかなって。」
雪丸さんの疑問に応じつつの朝希さんが袋から出した、『さよにゃんの耳と尻尾』。それを目にした瞬間、その場の全員が顔を引きつらせる。恐ろしい罰ゲームを考案してくるじゃないか。付けたままで天下の往来に出ろと? 一気に罰のキツさが増したな。肉体的なそれではなく、精神的なキツさが。
「あんた、マジ? 本気で言ってるの? 自分が負ける可能性もあるのよ?」
『絶対嫌だ』という表情の小夜さんが尋ねるのに、朝希さんはにぱっと笑って大きく首肯した。マジらしい。
「でも、面白いじゃん。勝つから平気だよ。私、こういうので負けたことないもん。」
「どっから出てくるのよ、その自信。……さすがに嫌ですよね? 雪丸さんもさくどんさんもやりたくないですよね? ね?」
そうだと言って欲しいんだろうな。珍しく『ね?』をしている小夜さんに対して、重すぎる罰ゲームに怯えている夏目さんが首を縦に振ろうとしたところで──
「私は問題ありませんよ。ライフストリーマーとして『面白さ』に背を向けるわけにはいきませんからね。……やるじゃありませんか、朝希さん。これは完璧に予想外な展開です。しかしそれがモノクロシスターズの提示する『企画』なのであれば、私はコラボ相手として従いましょう。」
「……バカ朝希の提案、受けちゃうんですか?」
「つまらないと感じたなら突っ撥ねますが、私は面白そうだと思ってしまったんです。それなら乗るのがライフストリーマーですよ。そもそもじゃんけんに勝てばいいだけの話ですしね。……無論、さくどんさんがNGを出すなら不成立ですが。」
小夜さんに返事をした雪丸さんの視線を受けると、夏目さんは……うわぁ、ここで対抗心を出してしまうのか。ちらちらと朝希さんが持っている耳と尻尾を見やって嫌そうな顔付きになりつつ、それでも了承を場に投げた。『ライフストリーマーとして』だなんて台詞を持ち出されたから、引くに引けなくなったんだろうな。
「私も……いいですよ、それでいいです。じゃんけんで負けたら耳と尻尾を付けて、語尾も変えてみんなの分のご飯を買いに行く。そういう企画でいきましょう。」
「……あの、私は嫌なんですけど。絶対、絶対嫌です。っていうか、何でこんなことになってるんですか?」
「小夜ち、我儘言っちゃダメでしょ! ……駒場さん、回してください。」
「あー……はい、録画開始しますね。」
呆然としている小夜さんを強引にソファに座らせた朝希さんに従って、邪魔になりそうなテレビを横に動かしてからビデオカメラを構える。そのまま夏目さんと雪丸さんも座り直したタイミングでオーケーサインを出してみれば、朝希さんが元気いっぱいに動画をスタートさせた。
「こんにちは! モノクロシスターズの朝希と──」
「……あっ、小夜です。」
「今日はさくどんさんと雪丸さんがホワイトノーツの事務所に撮影に来てるんですけど、みんなでお昼ご飯を食べながらお喋りするところを動画にしてもいいよって言ってくれたので、撮りたいと思います! でもでも、それだけだと物足りないから……これ! これを使ってちょっとしたゲームをしていきます!」
夏目さんや雪丸さんの進行と比較すると、少しだけ辿々しい話し方だが……何故だろう? 朝希さんの喋りには『ライフストリームっぽさ』を強く感じるな。飾らないというか、身近というか、率直というか。そういうライフストリームらしい魅力があるぞ。
俺が意外な発見に心中で唸っている間にも、朝希さんは夏目さんや雪丸さんからフォローされながら説明を続けていく。そして小夜さんは……あれ、ちょっと緊張しているのか? 何だか反応が鈍いな。さっきの撮影では序盤に少しだけ気を張っていたくらいで、後半は普通だったのに。
「──なので、じゃんけんで負けた人が耳と尻尾を付けて語尾ありで買い物に行くわけです! 猫と犬があるから、それは負けた人に選んでもらおうと思います。あと……そう、買ってくる物は勝った人が決められることにしましょう! 小夜ち、それでいい?」
「えっ……そうね、いいんじゃないかしら? さくどんさんと雪丸さんはそれで大丈夫ですか?」
「構いませんよ、私は常勝の女ですからね。トップになって牛丼を頼むことにします。今日はねぎ玉牛丼の気分なんです。」
「私だって負けませんよ。私が勝ったら……じゃあ、カレー。カレーが食べたいです。チキンカレーを買ってきてもらいます!」
ふふんと自信満々に言う雪丸さんと、むんと気合を入れて宣言する夏目さん。さすがにこの二人は上手く盛り上げてくれているのだが……むう、やっぱり小夜さんは本調子じゃないな。罰ゲームが嫌だという点を抜きにしても、ゲーム実況の時より大分口数が少ない気がするぞ。
そこに引っ掛かりながらカメラを動かしていると、遂に朝希さんが勝負の開始を告げた。
「じゃあじゃあ、早速勝負です! いきますよ!」
「ちょちょ、朝希ちゃん。最初はグーですか? それともパッと出す感じですか?」
「えっと、最初はグーでやります。それじゃあ……最初はグー、じゃんけんぽん!」
夏目さんに答えた朝希さんの合図で、四つの手が同時に突き出されるが……おー、一発で二人まで減ったな。夏目さんと小夜さんがチョキ、朝希さんと雪丸さんがパーだ。何となく意外な残り方かもしれない。
「やった、やった! やりました!」
「勝ったわ。……ああ、本当に良かった。」
「……あれ? 変です。私が一番に抜ける予定だったんですけど。」
「私もその予定だったんですけどね。……これはまた、そこそこ緊張してくるじゃありませんか。柄にもなく怖くなってきましたよ。」
嬉しそうな笑顔でカメラに勝利をアピールする夏目さんと、心からホッとした様子でへなへなと崩れ落ちる小夜さんと、きょとんとしながら開いた自分の手を見つめている朝希さんと、半笑いで余裕を失い始めている雪丸さん。四人の明暗がはっきり分かれたところで、朝希さんがさほど躊躇わずに勝負を再開する。
「まあいいや。……じゃあ雪丸さん、やりましょう! 多分私が勝つと思いますけど。」
「……いや、朝希さん? 貴女はどうしてそんなに落ち着いていられるんですか?」
「だって私、勝つはずです。だから雪丸さんが罰ゲームですよ。」
「……得体が知れませんね、貴女は。疑いゼロじゃありませんか。私も何だかそんな気がしてきました。恐ろしい人です。」
微塵も勝利を疑っていない朝希さんを見て、雪丸さんが戦慄の表情で呟いているが……確かに凄い自信だな。強がりでも何でもなく、自然体で勝つことを確信しているぞ。どういう感情なんだ? それは。
「とにかく、やりましょう。最初はグー、じゃんけんぽん! ……ね? 勝ちました! いぇい!」
「……私の負けですね。」
「私、じゃんけん強いんです。負けた記憶、殆どありません。……ほらほら、小夜ちとさくどんさんも決勝戦やってみて。」
「あ、そうですね。小夜ちゃん、いきますよ? 最初はグー、じゃんけんぽん!」
じゃんけんに強いも弱いもないはずだぞ。だからこそ古来使われてきたんだろうし、基本的には『運ゲー』じゃないのか? 朝希さんの発言を怪訝に思っている俺を他所に、夏目さんがまたもやチョキを出して小夜さんに勝利した。ということはつまり、雪丸さんがカレーを買ってくるわけか。
「雪丸さん、はいこれ。犬と猫、どっちにしますか? ゆきわんかゆきにゃんの二択です。」
にっこり顔の朝希さんが犬セットと猫セットを両手に持って差し出すと、葛藤している面持ちで短く黙考した雪丸さんは……やがて諦めたように猫の方を手に取る。『ゆきにゃん』を選ぶのか。彼女はあさわんではなく、さよにゃんを継ぐ者だったらしい。
「……色合いが今日の服装に合っていますし、こっちにします。」
「ちゃんと語尾も付けなきゃダメですよ?」
「……分かったにゃん。」
うーむ、面白い力関係だ。実況プレイ中も夏目さんは雪丸さんに翻弄されていたわけだが、その雪丸さんは朝希さんの素直さにやや押され気味だな。そして朝希さんを唯一制御できる小夜さんは、先輩二人に対して若干遠慮している節があるぞ。
三竦みならぬ四竦みの図を頭に浮かべていると、朝希さんが耳と尻尾を付けた雪丸さんを示しつつカメラに言葉を放った。
「というわけで、ゆきにゃんに四人分のカレーを買ってきてもらいます! その間に私たちはご飯を食べる準備とかをしておくので、えと……場面転換!」
力技で締めた朝希さんは、ちょびっとだけ困ったような顔で小首を傾げる。
「こういう時、どうやって次の場面に移せばいいか分かりませんでした。今のでいいですか?」
「そんなに意識しなくても、繋げば割と自然になりますよ。雪丸さんが外を歩いてる場面とかに移せば大丈夫だと思います。」
「まあ、そうですね。……そうですにゃんね。さくどんさんの言う通りだにゃん。ばっさり切って次に進めても、案外誰も気にしないにゃん。私が自撮りをしながら買ってくるので、編集でそれを繋いで欲しいにゃん。」
「……じゃああの、買うカレーを決めましょうか。あっちの交差点にあるココイチでいいですよね? スマホでメニュー出します。」
撮影外だろうが貫くのか。さすがだな。真顔で語尾を付けている雪丸さんのことをスルーすると、夏目さんはポケットから出したスマートフォンでCoCo壱番屋のサイトを開いてメニューを表示させた。それを見て買う品を選んでいる四人を背に、カメラを持ったままで事務所スペースへと移動する。俺も同行してホワイトノーツの分も買ってこよう。
「社長、カレーを買ってくることになりました。何がいいですか?」
「カレー? 向こうのココイチのテイクアウトかい? 折角だし、ピザだの寿司だのを取ってあげてもいいよ?」
「昼食の場面を撮るついでに、じゃんけんで負けた人が『買い出し』をすることになったんです。私もついて行きますから、社長の分も買ってきますよ。……由香利さんは外出中ですか?」
「ん、約束があるからとさっき出て行ったよ。食事は道中で済ませるそうだ。……なるほどね、オールドスクールな罰ゲームってわけか。それなら私は期間限定のやつを頼もうかな。この前食べて美味しかったんだよ。『二辛』で注文してくれ。」
ああ、夏野菜のやつか。確かに美味しそうだったし、俺もそれにしようかな。辛党の社長と違って俺は甘口だが。香月社長に頷きを返したところで、撮影部屋から出てきた雪丸さんが話しかけてきた。
「駒場さん、カメラを渡して欲しいにゃん。買う物が決まったから、買いに行ってくるにゃん。」
「私も同行します。……語尾、ずっと付け続けるんですか?」
「そういう企画にゃん。そしてライフストリーマーにとって、企画は絶対にゃん。神にゃん。戒律にゃん。」
「つまり、朝希さんか小夜さんの許可があれば普通に話せるわけですよね? 何というかその……ちょっと話し辛いので、私との会話だけは『にゃん抜き』にしてもらえるように頼んできます。」
ライフストリーマーの鑑のような発言だが、ずっとにゃんにゃん言われ続けるのは俺がキツいぞ。一言断ってから撮影部屋の朝希さんに許可をもらい、ぽかんとしている香月社長に声をかけた後で出入り口に向かう。
「朝希さん、私と話す時だけは雪丸さんの語尾無しでも大丈夫ですか?」
「へ? はい、オッケーです。」
「ありがとうございます。……行ってきますね、社長。」
「あー……ああ、うん。分かったよ。」
事情を呑み込めていない香月社長が目をパチクリさせながら見送る中、事務所のドアを雪丸さんと二人で抜けてみれば……うーわ、暑いな。一瞬にしてむわっとした熱気に包まれる。
「……暑いですね。」
「そうですね。……この場合『そうですにゃんね』と言うべきなのか、『そうだにゃんね』の方が自然なのか、はたまた『にゃんね』が既に間違っているのか。駒場さんは分かりますか?」
「語尾の使い方の『正解』を知らないので、私からは何とも言えません。……もう回しておきますか?」
「建物を出てからで大丈夫ですよ。」
謎の会話をしている間に三階に昇ってきたエレベーターに乗って、二人で一階まで降りていく。そのままオフィスビルの正面玄関から出たところで、雪丸さんが俺に話を振ってきた。絶好調の太陽を忌々しそうに見上げながらだ。
「しかし、駒場さんはどうして一緒に来たんですか? 頼んでくれればホワイトノーツの皆さんの分も買ってきましたよ?」
「それはさすがに悪いですし、その格好で一人で歩くのは辛いかと思いまして。変な人扱いされるよりも、『変な二人組』扱いの方が多少は気が楽なはずです。……そういう格好をしていると、誰かから絡まれる可能性もありますしね。ボディガードと言うには頼りないかもしれませんが、念のため同行しておくべきですよ。」
「何とまあ、貴方は過保護な人物のようですね。ボディガードですか。それなら頼りにさせてもらいましょう。……カメラ、貸していただけますか? 少しだけ撮りますから。」
「私が映しますよ。」
言いながらカメラを構えようとすると、雪丸さんは首を振って制止してくる。ダメなのか。
「自撮りの方が得意ですし、臨場感が出るんです。ここは任せてください。」
「……では、お願いします。」
自信ありげに主張する雪丸さんにカメラを渡してみれば、彼女はモニターをくるりと回転させて歩きながら『自撮り』を始めた。もちろん『ゆきにゃん』の口調でだ。まだ語尾に慣れていないからか、どことなく不安定な喋り方だな。……いやまあ、慣れていたらそれはそれでおかしいわけだが。
「外は非常に暑いにゃん! そして通行人がこっちを見てくるにゃん! 多分暑さでイカれたと思われてるにゃんね。カレー屋まではまだまだにゃんけど、早々に心が折れてきたにゃん。……とまあ、こんな具合で小刻みに撮るわけです。ちなみに今言ったのは全部本音ですよ。これは雪丸スタジオでもやらないレベルの過激な企画ですからね。実は結構羞恥を感じています。」
「……雪丸さんは革靴を食べる動画を上げていたはずですが、あれよりも辛いですか?」
「あれは面倒でしたが、辛くはありませんでした。むしろ楽しみながらやれましたよ。タンニン鞣しの革靴を見つけるのに時間がかかったのと、それが高かったこと以外は想定通りでしたから。……私としては、この格好でにゃんにゃん言っている方が断然厳しいですね。私のキャラに合っていなさすぎます。」
そうなのか。俺だったら革靴を食べる方が僅差で嫌だけどな。……雪丸スタジオに上がっている、『革靴を食べよう!』というストレートなタイトルの動画。一週間強で再生数百万回を突破したチャンネルを代表するあの動画の中で、この人はチャップリンさながらに本物の革靴を食べていたのだ。
何でも革の鞣し方によっては人体に有毒であるらしく、『比較的平気』なタンニン鞣しの高級革靴をヤスリ掛けしたり、様々な液体に漬け込んだり、叩いて柔らかくしたり、圧力鍋で煮込んだりして食べられる状態にまで持っていくという内容だったのだが……あれはまあ、凄かったな。真似できないし、そもそも真似しようとは微塵も思わないけど、しかし見てみたくなる動画ではあったぞ。
夏目さんが未だ達成できていないミリオンヒット。それを悠々とかました例の動画を思い出している俺に、雪丸さんが皮肉げな笑みで声を寄越してくる。すれ違う通行人たちが奇異の視線で彼女を見る中、蒸し暑さを感じさせない涼しげな顔で堂々と歩きながらだ。
「動画を作った当人が言うのも何ですが、あれこそがライフストリームの面白さなんです。昔ならともかくとして、今のテレビでは絶対に出来ない内容でしょうね。いくら危険を取り除いても、あんな企画では視聴者から大量の『ご意見』が送られてくるはずですから。……やれ靴が勿体無いだの、やれ健康面に問題があるだの、やれ誰かが真似をしたらどうするのかだの、やれ気持ちが悪い映像を出すなだの。そんな退屈な文句とスポンサー離れを恐れたテレビは、面白さの一つを切り棄てたわけですよ。」
「……雪丸さんは『テレビ』が嫌いなんですか? フォーラムの時にも話に出していましたが。」
『テレビ嫌い』というのはまあ、最近ではちらほらと聞く話だな。論点が多様すぎて難しい問題だけど、インターネット上ではよく見る話題になってきているぞ。俺の質問を耳にして、雪丸さんは苦笑いで回答してきた。
「答えに悩む質問をしてきますね。……『好きだった』という回答が一番正確かもしれません。私は父が録画した『民放黄金期』の番組を見て育ってきましたから。あの頃のバラエティは尊敬していますし、ライフストリーマーをやっていく上での参考にしていますし、今でも面白いと感じています。」
「ということは、今のバラエティは嫌いなわけですか。」
「まあ、好きではありませんね。バラエティのみならず、他のジャンルも嫌っています。ライフストリーマーを始めてからは更にその気持ちが強まりました。編集を用いて映像の中の発言を捻じ曲げるのが、どんなに容易いのかを実体験として学習しましたから。……上手く切り貼りすればどんな方向性だって持たせられますよ。編集者の思うがままです。」
呆れたように言い放った雪丸さんは、シャツの襟元を摘んでパタパタと扇ぎながら会話を続けてくる。……否定は出来ないな。編集によって発言の意図を曲解させるのは大いに可能だろう。前提の部分を削ったり、中を抜かしたり、最後を切ったり。実際にやっているかはともかくとして、やろうと思えばどうにだって出来るはずだ。
「しかしながら、そうせざるを得ないという点も理解できています。情報発信の寡占によって巨大に脹れ上がったテレビというメディアは、もはや自らの巨体を制御できていないんです。内側の人間たちもまた、作りたいものを作れない哀れな被害者なんでしょう。視点を変えれば踊らされているのは視聴者ではなく、制作側ですよ。」
「……同情的なんですね。」
ぬう、浅い理由でぼんやりと嫌っているわけではないらしいな。暑さで汗が滲んできた首筋を掻きながら相槌を打つと、雪丸さんはニヤリと笑って応じてきた。
「意外ですか? 私は私の愛する面白さをテレビから奪った、『彼ら』をこそ恨んでいますよ。例えばそう、ニュースのワイドショー化。あれが最も分かり易い実例でしょうね。……一人ではまともに知識を得られない雛鳥たちが、ピヨピヨと喚きながら情報をねだっているわけです。彼らはテレビが丁寧に咀嚼して、簡単に呑み込めるようにした情報しか受け取れないんですよ。そのまま渡されても分からないと彼らが喚き散らすから、ああいった形式になっているというだけの話ですね。」
「……『彼ら』というのは?」
「分かるでしょう? 駒場さん。彼らですよ。」
口の端を吊り上げながら周囲を……日本の首都と、そこを歩く人々を大仰に示した雪丸さんは、肩を竦めて続きを語る。『民衆』という意味か。
「これだけインターネットというものが身近になっても、未だ人間はきちんと知識を取得できていません。ポケットの中のスマートフォンを取り出して、検索した後でちょっとした情報の取捨選択をするだけなのに。……いやぁ、ゾッとしますよ。赤ん坊じゃあるまいし、自分で調べればいいだけの話じゃありませんか。手段が無かった大昔ならいざ知らず、今は方法がいくらでも存在しているんですから。他者に取捨選択の部分を一任している癖に、それで不利益が生じると今度は声高に文句を叫び始めるわけでしょう? もっと良い餌を寄越せと喚き散らすんです。何故自分で餌を手に入れようとしないのかが不思議でなりませんね。」
「つまり雪丸さんは制作側が悪いわけではなく、視聴者が望んだ結果として現状に繋がったと考えているんですか。」
「極端な意見だという自覚はありますし、制作側に一切の非が無いとまでは言いませんが、根本的にはそうであると思っていますよ。自分たちで作り上げた醜い巨人を、醜悪だと叩きまくっているわけです。どこまでもバカバカしい話じゃありませんか。」
「……初めて聞く意見です。同意できるかはまだ分かりませんが、面白いとは思います。」
苛烈な主張だな。雪丸さんの話を咀嚼するために思考を回していると、彼女はそんな俺を愉快そうに眺めながら口を開いた。
「正しい行動ですよ、駒場さん。他者の意見に簡単に同意すべきではありません。自分で考えるべきなんです。それをやめた瞬間、人間は価値を失うんですから。……貴方は私の話を聞いても、面倒くさそうな顔をしませんね。」
「面倒くさそうな顔、ですか?」
「こういう話を吹っ掛けると、大抵は『うわぁ、こいつ面倒なヤツだな』という反応をされるんです。政治の話、宗教の話、権利の話、人間の話。私はそういう内容を誰かと話すのが好きなんですが、大多数の人々は避けたがるようでしてね。お陰で私には友達が全くと言っていいほどに居ません。ずっと募集中なのに、悲しいことに梨の礫ですよ。」
「あー……まあはい、何となく分かります。私の場合は香月社長からよく振られているので、慣れているのかもしれませんね。面白いと言ったのは本音ですよ。もっと聞かせて欲しいです。」
うちの社長は一日に一度のペースで同じような話題を放り投げてくるのだ。由香利さんが議論の相手に立ち、俺は二人の論戦を聞いているというケースが殆どなのだが……傍聴している分には結構楽しめるぞ。主張するのは得意ではないので、あまり参加は出来ていないけど。
俺の返事を受けて、雪丸さんはクスクス微笑みながら声を放ってくる。ちょっとご機嫌な雰囲気だな。内心を読み解くのが難しい人だけど、徐々に分かるようになってきたぞ。
「貴方はどうやら『聞き上手』な人のようだ。私たち『話したがり』からは好かれるタイプですね。香月社長も恐らくそう思っていますよ。良い聞き手が側に居るのは羨ましいことです。」
「私は話すのが苦手なんです。だから雪丸さんや香月社長のように、会話を先導してくれる人が相手だとやり易いですね。……ライフストリームを始めたのも、さっきのテレビの話が切っ掛けなんですか?」
「全てではありませんが、関係はありますね。私は私が信じる面白さを証明したかったんですよ。世界中の人間に突き付けてやりたかったんです。……正直、間違っているのは自分の方かもしれないと思っていました。というか、今でも心のどこかでそう考えています。テレビというメディアがああなったのは真っ当な変化であって、自分は過ぎ去ったものを美化しているだけではないかと。」
「……雪丸スタジオの登録者数は日本個人でトップです。それが証明にはなりませんか?」
少なくとも現時点において、彼女が掲げる『面白さ』は日本のライフストリーム内で最も支持されていると言えるはず。おずおずと送った俺の言葉に、雪丸さんは疲れたような半笑いで返答してきた。
「今のライフストリームはまだ『一般的』とは言い難いプラットフォームですよ。これから急激に利用者数が増えていき、数年経って歴史が積み重なっていけば、私は受け入れられなくなるかもしれません。……苛烈さは人を惹き付けますからね。強く他者を批判したり、大きな声で文句を叫んだり、派手に問題を提起したり。人々はそういう人間を好み、持ち上げます。私のチャンネルが持っているのはそれに近い性質なんです。」
俺の前に出て両手を広げながら語った雪丸さんは、片足を軸にくるんと振り向いて続けてくる。彼女には似合わない、何とも弱々しい表情でだ。
「しかし、苛烈さは同時に飽きられ易くもあります。疲れるんですよ、そういうエンターテインメントは。気分が乗っているうちは爽快で楽しいかもしれませんが、ふと冷静になった時に虚しくなるんです。……だからまあ、遠からずさくどんさんが私を抜くでしょうね。」
「さくどんさんが?」
「彼女は捻くれ者の私と違って、物事の良い部分を取り上げられる人ですから。いつも笑顔で、当たり障りのない柔らかい発言で、自分の失敗で他人を笑わせて、成功した時は誰かに感謝できる。一見すれば私の動画の方が鮮烈で派手でしょうし、口さがない者は平凡で退屈だと評価するかもしれませんが……結局はさくどんさんの方に人が流れますよ。彼女のチャンネルは落ち着きますからね。それは私には絶対に手に入れられない魅力なんです。」
『落ち着く』か。しっくり来る表現だな。そこで一度大きくため息を吐くと、雪丸さんはやれやれと首を振りながら繋げてきた。
「さくどんさんがやっていることがどんなに難しくて、どんなに気高い行為なのかを私はよく理解できています。私は極論自分のために動画を作っていますが、彼女は自然体で他人のためにそれをやっているんですから。そんなもの勝てるわけがありませんよ。……フォーラムでの私とさくどんさんの会話を覚えていますか? あの時彼女は、『見てくれる人たちに楽しんでもらいたいだけです』と言っていましたよね?」
「……言っていましたね。」
「あの瞬間、負けたと思いました。あれが多分、彼女のチャンネルの根幹なんですよ。……さくどんさんと競えば、私はどうあっても『刺激的なお妾さん』にしかなれません。正妻の座は彼女のものです。雪丸スタジオで派手に騒いだリスナーたちは、疲れた身体を癒しにさくどんチャンネルに帰っていくでしょう。そこにはホッとするような安寧があるんですから。」
言い切って立ち止まった雪丸さんは、鳴り響くセミの声を背景に話題を締めてくる。諦めの苦笑いでだ。
「それでも私はさくどんさんに勝ちたいんです。負けが見えている勝負でも、挑まずにはいられないんですよ。誰より認めている彼女に勝ってこそ、私は私の面白さに胸を張れるんですから。……いや、少々話しすぎましたね。貴方はどうにも良い聞き手すぎる。警戒すべき人物のようだ。少なくともこの対決企画が終わるまでは、今の話はオフレコでお願いします。」
「私は聞けて良かったと思っていますが、雪丸さんがそう言うなら内緒にしておきます。……さくどんさんの方も、雪丸さんに勝ちたいと思っているようでしたよ。不思議な関係ですね。雪丸さんはさくどんさんに焦がれていて、さくどんさんは雪丸さんに憧れているわけですか。」
モノクロシスターズの二人の関係を思い出すが、あれともまた少し違うな。夏目さんと雪丸さんの場合は、互いを目指して競い合っている感じだ。正しくライバルだなと感心している俺に、雪丸さんは猫耳の位置を調整しながら反応してきた。
「『焦がれている』というのは詩的な表現ですね。的確だと思いますよ。……何れにせよ、話はここまでです。貴方はさくどんさんのマネージャーであって、私のマネージャーではない。そんな貴方を相談相手にするのはさくどんさんに悪いですから。『横取り』は趣味ではありません。それがさくどんさんのものなら尚更です。」
「それは残念ですね。私としては、雪丸さんともっと話したいんですが。」
「……難しい人ですね、貴方は。本気なのかお世辞なのかが判別できません。私はそういう機微を見分けるのが得意だったはずなんですが、貴方の発言は徹頭徹尾本音に聞こえます。」
「さっきも言った通り、紛うことなき本音ですよ。ライフストリームの話もしたいですし、メディアに関する意見も聞いてみたいです。雪丸さんからは学べることが沢山ありそうですから。」
そこまで口にしたところで、パッと思い付いた提案を雪丸さんに飛ばす。
「では、こうしましょう。友達になりませんか? 私は昔芸能マネージャーをやっていたんですが、他事務所の友人が居て助かったことが多々あるんです。何というかこう、プライベートだからこそ出来る話もありましたから。ライフストリームという共通の仕事をしているわけですし、雪丸さんが友達になってくれれば頼もしいんですが……どうでしょう?」
何か、驚いているな。突っ立ったままで目をぱっちり開いているぞ。俺、そんなに変なことを言っているか? 先程雪丸さんは『ずっと募集中』と言っていたし、前職の頃にも同じような流れで友人を作った経験があるのだが……これは、どうなんだ? 冷静な視点で考えてみると、俺が雪丸さんに提案するのはちょっと変だったかもしれない。
訪れた沈黙に若干不安になってきたところで、再起動を果たした雪丸さんが一歩引きながら探るように応答してくる。
「……ひょっとして私は今、口説かれていますか?」
「いやいやいや、違いますよ。純粋な……あれです、友人になりませんかという話です。雪丸さんが募集中だと言っていたので、本気にして口走ってしまいました。迷惑だったなら聞き流してください。」
「……分かりませんね、さっぱり分かりません。これほどストレートな『友達の申し込み』をされたのは初めてです。」
「まあ、そうですよね。改めて考えると唐突すぎたかもしれません。忘れてください。」
怪しまれているようだから、ここは大人しく引き下がっておこう。変な誤解に繋がるのは避けたいぞ。言われてみれば『ナンパ』みたいな行動だし、勘違いされるのも仕方がないかもしれない。いきなり『友達になりましょう』はマズかったな。
慌てて撤回した後で再び歩き出そうとすると、雪丸さんがパッと進路に手を出して止めてきた。
「待ってください。……構いませんよ、友達。友達になりましょう。」
「……あの、無理しなくても大丈夫ですよ? 私も何だか変な提案だったように思えてきましたし。」
「いえ、有意義な提案だと思います。先ずは『メール友達』から始めましょう。私は『友人』という存在との距離感が分からないので、やや不安ではありますが……まあ、試しにやってみるのも悪くはなさそうです。アドレスを教えてください。」
真面目な面持ちの雪丸さんに促されて、胸ポケットからスマートフォンを出してアドレスを……これ、教えちゃって平気だよな? 段々心配になってきたぞ。香月社長から『スパイ行為』として怒られたりしないだろうか?
そんなことを思案していると、アドレスを登録し終えたらしい雪丸さんがスッと手を差し出してくる。本日二度目の握手をしたいらしい。
「では、まあその……改めてよろしくお願いします、駒場さん。」
「あーっと、はい。よろしくお願いします、雪丸さん。」
何にせよ、成立してしまったからには真摯に付き合っていくだけだ。セミたちが騒ぎまくっている中、炎天下のぎこちない『友人契約』の握手が交わされたところで──
「ちょーっとすいませんね、少しだけお話しさせてもらってもいいですか?」
どこからともなく近付いてきた二人組の警察官が、愛想笑いで俺たちに声をかけてきた。うわぁ、職質だ。猫耳と尻尾を付けた女性と、スーツ姿の成人男性が道のど真ん中で握手をしているわけだもんな。そりゃあ職務質問をかけるだろう。
面倒なことになってしまったなと眉根を寄せている俺を他所に、雪丸さんが笑顔で制服警官たちへと言葉を返す。まさかの口調でだ。
「大丈夫にゃんよ。お勤めご苦労様だにゃん。」
いや……えぇ、嘘だろう? この人、警察官相手にもその語尾でいくのか。ぶっ飛びすぎだぞ。雪丸さんの発言に俺がひくりと顔を引きつらせている間にも、ベテランっぽい年嵩の警官が愛想笑いを崩さないままで歩道の隅に誘導してくる。さすがは大都会東京の警察官だけあって、『変な人』の対処には慣れているらしい。
「お忙しいところすいませんね。歩く人の邪魔になっちゃうので、あっちの日陰に移動しましょうか。」
「了解だにゃん。」
「あの、雪丸さん? ここは普通の口調でいいんじゃありませんか?」
「普通に話していいのは駒場さんに対してだけですよ。ルールをしっかり守らないと、企画が成立しないでしょう? ライフストリーマーとしてそこを曲げるわけにはいきません。」
恐ろしい人だな。気合が入りすぎだぞ。真顔で正論……本当に正論かは意見が分かれそうだが、とにかくライフストリーマーの矜持を語った雪丸さんは、お尻のポケットから出した財布の中の免許証を警察官に差し出した。行動がやけに早いし、もしかすると『職質慣れ』しているのかもしれない。
「免許証、あるにゃん。」
「あーどうも、助かります。……えーっと、秋山さんね。」
「そうだにゃん。
「……そう、なるほど。ってことは、十九歳ね。どうしてそんな格好してるの? そちらの男の人との関係は?」
十九歳だったのか。香月社長の『目利き』は確かだったようだ。謎の正確さで自分の誕生時刻を述べた雪丸さんに、年嵩の警察官が僅かにだけ怯んだ顔付きで問いかける。それを受けてちらりとこちらを見た『ゆきにゃん』は、何故かちょびっとだけ誇らしそうに答えを言い放った。
「友人にゃん。さっき友達になったにゃん。メールアドレスも交換したにゃん。」
「……なるほど、さっきね。貴方も身分証があれば見せてもらえます?」
あーこれ、良くないな。もう一人の若い警察官がさり気なく俺を囲むように立ち位置を変えたし、どうやら十九歳の女性と急に『友達』になった怪しい成人男性だと勘違いされているらしい。……まあ、間違ってはいないけど。
いやはや、これは誤解を解くのに時間がかかるかもしれないな。出来立てほやほやの友人が災難を運んできたことに苦笑してから、脳内で言い訳を組み立てつつ財布を取り出すのだった。
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