第101話 出発の準備
ご令嬢の視察団は無事完成した。
私、リン、エルス、アルメダ。それに護衛役のアルレアと姿を見せない赤フード。
だが、私には他にも同行してほしい存在がいた。ビッグである。
小旅行の規模とはいえ、しばらくの間、この国を離れることになる。
できれば、近くにいてもらえると助かると思い、私はビッグがすむ森を訪れた。
事情を説明したところ、ビッグは喜んで着いてきてくれるようだった。
出発の日の朝に合図を出せば、上空から見守りながら他の子達に気づかれないように同行してくれるらしい。
言葉で直接、意志疎通することはできないが、目を見るだけでかなり言いたいことがわかるようになってきた。
自分でも気づいていないだけで、何かしらのパッシブスキルが理解の手伝いをしてくれているのかもしれないが。
そしてあと一人、挨拶をしておきたい人物が。
「しばらくの間、城下町を留守にする」
私は人が一番少ない深夜を狙って、冒険者ギルドを訪れていた。
夜遅くまで、何やらごそごそとやっていた受付のお姉さんに私は声をかけた。
赤フードの冒険者をあてにせずに、しばらくは頑張ってほしいという意味合いで伝えに来たのだが、思わぬ答えが返ってくる。
「あ、赤フードさん。実は私もしばらくここを留守にするんです。今はその荷造りをしているところで」
「え? どこにいくの?」
「隣国のダリルズです。そちらに大きな冒険者ギルドの支部がありましてね。私もただの受付嬢から、もう一段階、権限が強化される役職になるために実務をこなしながら試験を受けるつもりなんです」
「そ、そうなんだ」
「それで、赤フードさんはどちらに?」
「……ダリルズ」
「わあ! なら、向こうでの依頼のなりとりなんかも困りませんね!」
予想していなかった展開だが、向こうに知り合いのギルド関係者がいれば、何かと都合がいいかもしれない。
こうして、準備は整った。
視察とはいえ、スキルに関する研究を兼ねているため、二週間ほどの滞在期間を予定している。
しばらくこの国とはお別れだが、たまには他の国を自分の目で見るのも良いだろう。
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