第100話 隣国への小旅行
旅に友人を同行する許可が得られたのは予想外のことだった。
もし一緒に来たいという貴族の友人がいるのならば、エルバルク家からの頼みとして、正式に各家に話を通すとお父様は言った。
旅に誘うなら、まずはいつもの三人だろう。
そう思ってお茶会を開き、彼女たちにその事を伝えたのだ。
「エルバルクの家から言ってもらえるなら……わたしは行きたいかも」
最初にそう言ったのはエルスだ。
私もエルスは来てくれるだろうと思っていた。
隣国はスキル発祥の地。
となると、スキル研究家としての側面を持つエルスにとっては有益な学びを得られる場所だろう。
「ありがと、エルス! リンとアルメダはどうかな?」
「私もキリナと一緒なら行ってみたいかな。この国を離れたことはまだないから」
そう答えたのはリンだ。
「私は家のこともありますし……うーん、どうしましょうかね」
アルメダは微妙な反応。赤フード姿では距離が縮まった気がしているが、普通の令嬢モードでは、未だに少しの敵意を感じる。
と、赤フードで思い出した。
「あ、そういえば、私たちの視察の護衛には赤フードの冒険者と王国騎士団長のアルレアがついてくることになってるよ」
「あ、赤フードさんが!?」
大きな声を出して、目を輝かせるのはエルス。
……だけではなく、アルメダの態度も軟化する。
「赤フードさんが来るというのでしたら、その……行ってあげないこともないですが……」
「まぁ、赤フードの冒険者は直接一緒に行動するわけじゃなくて、何か危険があったら出てくることになってるけどね。視察の邪魔をしたくないんだって」
私と赤フードが同時に存在できない言い訳もきちんと用意してあった。
「それにしても、私たちの視察にアルレア様も来てくれるなんて……どうしてだろう?」
リンが首を傾げる。
その疑問に関しては私も同意見だった。
お父様が事前にアルレアに相談をした時、二つ返事で護衛を了承してくれたようだ。
思い出してみれば、アルレアは自分の保有スキルに少し劣等感を抱いているようだった。
『騎士剣の奇跡』と『黄金剣の奇跡』は素晴らしいスキルだったけれど、その他の三つのスキル枠を埋めるにふさわしいスキルの適正が出ていないのだろう。
隣国行きを断らなかったのも、その関係かもしれない。
「じゃあとりあえず、みんな一緒に行くってことでいいかな?」
私の問いにその場の全員が頷いた。
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