第125話 勇者と魔王と感謝
「な……何を馬鹿なことを言っておる……この娘が魔王様だというのか?」
鼻で笑っているアンデッドキングだが……明らかに動揺しているようだった。
「えぇ。本当ですよ」
俺は即座にそう言う。マオに取り憑いたアンデッドキングは、あまりにもいきなり過ぎる状況に戸惑っていたようだった。
「……も、もし、仮に魔王様だとして……なぜ、ワシがこうも簡単に憑依できるのじゃ?」
「それは、魔王様がそもそも、弱いからですよ」
「なっ……貴様! 魔王様を馬鹿にするな!」
「馬鹿にもしますよ。だって、俺が簡単に勝ってしまったんです。それくらい魔王は弱かった。だから、アンデッドキングであるお前も簡単に憑依できることができたんです」
実際はどうかわからないが、まぁ、自分の正体をカモフラージュするくらしか魔法が使えないマオだ。アンデッドキングに簡単に憑依されてしまうのも仕方ないだろう。
「……ほ、本当なのか? この娘が魔王様……」
「じゃあ、聞いてみればいいじゃないですか」
俺がそう提案すると、アンデッドキングは納得したような顔をしたが、すぐにキッと俺を睨む。
「その手には乗らんぞ。ワシをこの娘から引き剥がそうとしているのじゃな?」
「いえ、単純にそれが一番簡単な方法だと思ったからですけど」
俺がそう言うと、アンデッドキングはしばらく疑り深そうな視線で俺を見ていたが、観念したように肩を落とす。
「……わかった。ワシの根負けじゃ。確認させてもらうぞ」
そう言うと、フッと、マオの身体から白い霧のような者が抜けていった。それと同時にマオが膝から崩れ落ちる。
「マオ!」
俺は慌ててマオの身体を受け止めた。マオはゆっくりと目を開ける。
「ん……ん? な、なんじゃ? ソーマ……ここは?」
俺は思わず安心てしまった。どうやら、異常はないようである。
「……娘よ」
と、すぐ近くから声が聞こえてきた。見ると、白い霧が集まって、頭部に王冠を被った骸骨の姿を作っていた。
「な……なんじゃ……?」
マオがいきなり現れた霧状の骸骨を見て驚く。
「……お主は……魔王なのか?」
骸骨が問いかけると、マオはしばらく呆然としていたが、少ししてから、コホンと咳払いをする。
「その通りじゃ! 儂はこの世界の魔王じゃ!」
それを聞いて霧状の骸骨はしばらく呆然としていた様子だった。
「あぁ……そうでしたか……ワシはなんと……愚かな真似を……」
そう言うと同時に、霧状の骸骨の姿が崩れていく。そして、霧状の骸骨は……言葉その通りに、霧散してしまった。
周囲を見ると、いつのまにか、スケルトンの無限湧きも収まっている。どうやら、苦境を脱したようだった。
「ん? ソーマよ……一体どうなっておるのじゃ?」
困惑しているマオを見て、俺は思わず笑ってしまう。
「アナタが、魔物を退けたんですよ。ありがとうございます」
俺が思わず「ありがとうございます」などと言ってしまったためか、マオは目を丸くする。
「……そ、そうか……よくわからぬが……うむ! ソーマに感謝されるのは、悪い気分ではないな!」
そう言って得意げにするマオを見て、俺は……間違いなく、安心を感じてしまっていたのだった。
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