第124話 勇者と魔王と賭け
「はぁ……はぁ……」
それからどれくらい経っただろうか。
俺は剣を振り続け、スケルトンを倒し続けていた。一体一体は雑魚なので、一瞬で倒すことができる。実際、100体以上と倒したと思う。
しかし……最悪なことに、奴らは無限に湧き出てくるようだった。
そもそも、気付くべきだった。この場所がどういう場所で、明らかに立ち入る場所でないということを。
「フフフ……どうやら相当疲労しているようじゃな」
マオに取り憑いたアンデッドキングが余裕の表情でそう言う。
アンデッドキングの周りには、スケルトンが隙間なく配備されており、マオの身体にまで近付くことができない。
俺はちらりとセリシアとドラコのことを見る。
「……セリシア。アナタ、仮にもシスターでしょ? 浄化の魔法とか使えないんでしたっけ?」
俺がそう言うとセリシアは首を横にふる。
「無理です……私、サキュバスですよ? そんな魔法使ったら逆に私が浄化されてしまいますし……」
と、アンデッドキングがこちらに興味を示したようだった。
「なんじゃ。そこのシスターはサキュバスなのか?」
声をかけられたセリシアは怯えながらも小さくうなずく。
「ならば、ワシらの味方になれ。どういう事情か知らんが、人間と共に行動しているのには事情があるのだろう?」
「え、えぇ……まぁ……」
「既に身体を失い、霊体となったワシだが……今でも魔王様に忠誠を誓っておる。この世界を魔族のためにより良いものとするためにな。ワシは魔族の同胞には手を出さぬぞ」
……ん? ちょっと待て。今このアンデッドキング。なんて言ったんだ?
魔王に忠誠を誓う……って言ったよな?
と、同時に俺の頭にこの状況を切り抜ける庵が思い浮かぶ。
といっても……それは賭けだ。しかも、かなり確率の低い賭けであったが、それに縋るしかないようだった。
「……おい。アンデッドキング」
「なんじゃ? 降参か? 良いぞ。ワシは寛大じゃからな。一度お前を殺して、ワシの配下にしてやっても良いぞ?」
アンデッドキングがそう言うと同時に、俺は大きな声で笑ってやった。
「そ、ソーマ様……?」
「ソーマ、壊れた?」
セリシアとドラコが心配そうな顔をするが、俺は嘲笑うのをやめなかった。
「……なんじゃ。自分の境遇に笑えてきたとでもいうのか?」
「……いえ。お前があまりにも哀れで、笑えてきてしまったんですよ」
「……なんじゃと?」
「お前は、今、魔王様に忠誠を誓っている、と言いましたよね?」
「それが……どうしたというんじゃ?」
俺はそう言うと同時に、剣を捨てる。そして、アンデッドキングの前に立つ。
「俺は勇者です」
「……は?」
「王都から魔王を倒すために派遣されました。そして、俺は魔王を倒した。俺に倒された魔王は命を助けてもらうために、俺と王都まで同行することになったんですよ」
俺がそう言うとアンデッドキングの取り憑いているマオの表情がさらに青ざめていく。
俺は最後の一撃を放つことにした。
「つまり……お前が取り憑いているその魔族の娘こそ、お前が忠誠を誓う魔王張本人ってことですよ」
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