第126話 勇者と魔王と本当の気持ち
「……ズルいです」
と、アンデッドキングとの遭遇、そして、廃墟を後にして俺たちは王都への道のりを再び歩きだしていた。
しかし、セリシアがまたしても不満そうな顔で俺のことを睨んでいる。
「……何がズルいんですか?」
「だって! マオ様のことは普通に助けようとしていたじゃないですか! 私のことは見捨てようとしたくせに!」
……このサキュバス、だんだんわかってきたが、結構面倒な性格をしているようである。
俺はわざとらしくため息を付いて、セリシアのことを睨む。
「それはそうでしょう。マオは王都につれていかなければならないんですよ? 王都までは安全につれていかなければならないでしょう?」
俺がそう言うとセリシアはそれでも不満そうに俺のことを見ている。
と、俺は先ほどの廃墟でアンデッドキングに見せられた光景のことを思い出す。
もし、マオがあの時見せられた光景を同じようになったら……俺はどうするのだろうか?
ただ、少なくとも……あの光景をもう一度見たいという気持ちにはならないのは、確かなようだった。
「マオ様もどう思いますか? ソーマ様は、マオ様のことだけ、特別扱いしてますよね?」
セリシアにそう言われると、マオは少し苦笑いしていたが、それ以上は何も答えなかった。
……やはり、俺が廃墟で言ったあの言葉を思い出す。
なぜ……あんなことを言ってしまったのだろうか? 俺は、マオのことを本当に心配してなかったのだろうか?
そして、マオのことは俺のことを本当に心配してくれていたのだろうか……だとすれば、俺は――
「ソーマ」
と、ふいにドラコの声で俺は我に返る。
「……はい? どうかしましたか?」
「疲れた。もう休みたい」
言われてみれば確かに、結局、廃墟では休みことができなかったのだ。ドラコの言葉で俺自身も、疲労していることに気付く。
……まぁ、無限湧きするスケルトンを倒し続ければ、疲れるのは当たり前ではあるのだが。
「……そうですね。今日は休みましょうか」
俺はそう言って、ちらりと、マオのことを見る。
マオは一瞬俺と目を合わせたが……気まずそうに目を反らしてしまった。
……流石に今回は俺が悪い。自分でも珍しくマオに謝ろうと思ったのであった。
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