第117話 勇者と魔王と霧

「なんだか……霧が出てきましたね」


 次の村に向かっていると、段々と霧が出てきた。


 先ほどまで晴れていたというのに……なんだか変な感じである。


「ソーマ、村まではあとどれくらいなのじゃ?」


「もうすぐ着くはずですが……あ。あれじゃないですか?」


 と、前方に村らしき場所が見えてきた。俺たちは足早に村の方に向かう。


 村についても霧は晴れなかった。というか、霧が晴れない以上に、おかしなことがあった。


「……誰もおらぬのぉ」


 マオが信じられないという顔でそう言う。確かに村には誰もいなかった。


「また、廃村に来ちゃったんですかね」


 俺はそう言いながら周囲を見回す。しかし……廃村というにはあまりにも建物も綺麗だった。


 それこそ、つい先ほどまで誰かが住んでいたような、そんな真新しさだった。


「……なんだか、変な感じですね」


 そう言ったのは、セリシアだった。


「……魔法の気配などは感じませんが、セリシアは感じるのですか?」


「いえ……そういう感じではないのですが。何かこう……サキュバスとしてのカンのようなものが……」


 サキュバスのカン……なんとも当てにならない言葉である。


「ソーマ。ドラコ、疲れた」


 と、そんな折にドラコがそう言った。


「……とりあえず、宿屋を探しましょう。宿屋には誰かいるでしょう」


 俺がそう言うと共に、俺たちは宿屋を探すために歩き出したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る