第116話 勇者と魔王と終わった後の事

「それでソーマ様が私のことを……あぁ、思い出しても酷いです……」


 オークの集落を離れてからしばらく経っているというのに、セリシアは相変わらず、訴えるようにマオに、自分が人質にされたこと、そして、俺に見捨てられそうになったことを話していた。


「あはは……た、たしかに本当にそれは酷いのぉ……」


「そうですよね!? ホントに酷いです……」


 そして、セリシアは俺のことを睨んでくる。未だに許してくれないようである。


 マオはマオで、流石にその話に飽きたのか、苦笑いしながら対応している。


 それにしても……そろそろ、王都までも近付いてきたはずだ。つまり、この連中と同行ももうすぐ終わるということである。


 そう考えると重い肩の荷が降りるというか……すっきりするような気もする。


 しかし、もしそれが終わったら……俺はどうすればいいのだろう?


 魔王を王都に引き渡せば……それで終わり? 俺の勇者としての役目も終わりなのだろうか?


 終わった後は……どうすればいい? 俺は俄に不安になってきた。


「ソーマ?」


「……え? 何か?」


「いや、何かとても深刻そうな顔をしていたのでな……どうかしたのか?」


 マオが不安そうに俺にそう言ってくる。そもそも……本当にこのポンコツ魔王を王都に引き渡すのか?


 王都に引き渡せば、コイツは間違いなく……いや、何を考えているんだ。そのために俺は魔王の城まで行ってきた。そして、コイツを連れて帰ってきているのだ。


 今更……後戻りなどできないのだ。


「……なんでもありません。さぁ、先を急ぎましょう」


「そうじゃな……そういえば、このまま王都まで直行するのか?」


 ……確かに王都までも既にかなり近い距離に来ているわけだし、このまま直行しても良いのだろう。


 だけど――


「……この先に小さいけれど村があるようです。そこで一度は休みましょう」


 俺は自然とスキル「千里眼」を発動していた。


「うむ。そうじゃな。急ぐわけでもないしのぉ」


 マオは嬉しそうに微笑んだ。


 どうして俺はわざと時間がかかる選択をしてしまったのだろう……俺は自分の行動に疑問を懐きながら歩き続けたのだった。

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