第113話 勇者と魔王と残酷な宣告

 それから程なくして俺とセリシアはオークの集落にたどり着いた。


「お前、帰ってきたか」


 門番が驚いた様子で俺を見る。


「えぇ。長老のところに案内してくれます?」


 俺がそう言うと門番は素直に従った。不安そうなセリシアを他所にどんどんとオークの集落を進んでいき、俺たちは長老の家に入っていった。


「あ……ドラコ!」


 と、家に入るなり、長老とマオのことは完全に放置して、セリシアはドラコに駆け寄っていった。


「あ……セリシア……」


 ドラコは気まずそうな顔でセリシアのことを見る。


「どうして……どうしてこんな勝手なことをしたのですか!?」


 セリシアが珍しく怒っている。さっきまで人質にされて半泣き状態だったというのに。


「……ごめん」


 ドラコは短くそう言った。すると、セリシアは黙ってドラコの頭を撫でていた。


「ソーマ。無事なようじゃな」


 と、完全に置き去り状態だったマオが俺に話しかけてくる。


「えぇ。あと、問題になったいたことは、解決しましたよ」


「……何? どういうことじゃ?」


「オークの討伐、断ってきましたから」


 俺がそう言うとマオは目を丸くする。


「そ、そうか……」


「意外でしたか?」


「いや、そういうわけでは……」


 と、驚いているマオを他所に長老が俺に歩み寄ってくる。


「なんとお礼を言って良いか……ありがとうございます」


 長老は深くお辞儀をする。しかし……俺は良い気持ちではない。


 なぜなら……これは、良い結果ではないからだ。


「ですが、アナタ達オークは……今すぐにでもこの土地を離れる必要があります」


 俺は少し言いにくかったが、そんな残酷な宣告をゆっくりとしたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る