第98話 勇者と魔王と長老

 それから、俺はマオとドラコが戻ってくるまで手持ち無沙汰で待っているしかなかった。


 少ししてから……本当にあの二人だけを行かせて大丈夫だったのか、心配になってきてしまった。


 ……いやいや、相手がオークとはいえ、そもそも、一人はこの世界の魔王だ。


 まぁ、どう見ても魔王には見えないが……とにかく、魔王であることには間違いない。


 そもそも、俺はマオのことを心配しているというのも中々おかしな話である。最終的には、俺はマオを王都で引き渡そうとしているのだ。


 それなのに……どうにもこうして待っていると心配になってしまうというのは不思議な気持ちであった。


 と、俺がそんなことを考えていた矢先だった。


「ソーマ!」


 マオの声が聞こえてきた。声のした方を見ると……マオとドラコがこちらにやってくる。二人共、特に問題はないようだった。


「……どうでしたか? オーク達はなんと?」


 俺がそう言うとマオとドラコは顔を見合わせる。それから、少し申し訳無さそうにマオが俺の事を見る。


「あー……その、少し、お主と話をしたいという者がおってな」


「俺と話を? オークが?」


「えぇ……そうです」


 と、マオとドラコの背後からしわがれた声が聞こえてきた。


 見ると、複数のオークに厳重に警護されながら、腰の曲がった高齢のオークが、こちらに近付いてくる。


「……アナタは?」


「ワシはこのオークの集落の長です……アナタ様は人間のようだが……ドラコ様とマオ様の話を聞いていると、どうしてもアナタと話をしたいと思いまして……」


 ……なるほど。話し方からしても、門番のオークとは違い、それなりに知識や判断力があるようである。


 それに、マオとドラコの話を聞いて、オーク達がどうしようとしているのも知りたい。


「わかりました。話を聞きましょう」


「ありがとうございます。では……こちらへ」


 長老らしきオークが手招きする。今度はドラコとマオだけでなく、俺も集落の中に進んでいった。


 無論、周囲のオークからはどう見ても歓迎されていないような視線を受け取っていたのだが。

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