第97話 勇者と魔王と嫌い

「へぇ……俺に武器を向けるんですか?」


 スキルを使用しないでもわかる。


 こんなオークは、俺にとって雑魚未満の存在で、一瞬で倒すことができる。


 実際、オークの方も俺との戦力差を理解しているようで、俺に向けた槍はどこか自信なさげだった。


 しかし――


「ま、待て! やめるのじゃ!」


 と、マオにそう言われ、オークは槍を下ろす。


「……なぜ? コイツ、人間」


「そうじゃが……ソーマは儂達の仲間じゃ」


「仲間? お前達、人間と仲間?」


 と、その言葉でドラコとマオに対しても門番は不審の目を向ける。これは不味い……ということだけは俺もわかった。


「違いますよ。仲間なんかじゃありません」


 俺がそう言うと門番は俺の方を見る。


「どういう意味だ? 説明しろ」


「そのままの意味です。ソイツらは俺の奴隷です。奴隷扱いされるのが恥ずかしいから、仲間だと言い張っているだけですよ」


 俺はそう言ってマオとドラコを見る。


「なっ……! わ、儂らは奴隷では――」


「私達、奴隷」


 と、マオの言葉を遮って、ドラコがそう言う。


「だから、あの人間、嫌い」


 ドラコがその言葉でオークも納得したようだった。単純で助かる。


「わかったでしょう? 俺はついていきませんよ。ここで待っています。奴隷が勝手にどこかに行ったら困りますし」


「……わかった。お前ら、こっちに来い」


 そう行ってオークの後をマオとドラコはついていく。


 一瞬、ドラコがすまなそうな目で俺のことを見ていた。


 嫌い、か……別に嘘とわかっているのだから、構わない。


 そもそも、別に誰かに好かれようなんて俺は思っていないのだから。

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