第99話 勇者と魔王と残酷

 オークの集落には、何匹かのオークが住んでいるようだったが、たしかに歓迎されていない視線を受けてはいるものの、攻撃してこようという感じではない。


 もっとも、戦ったところで一瞬で勝負はつくわけだし、流石にオークたちもそれは本能で理解しているのかもしれない。


「どうぞ」


 と、長老に案内されるままにたどり着いたのは、集落の中でも大きな家だった。どうやら長老の家らしい。


 俺とマオ、そして、ドラコは長老の家の中に入っていき、案内された客間のような場所で腰を下ろした。


「……さて、早速本題に入りましょうか」


 丁寧な言葉遣いのままに、長老は話をはじめた。


「マオ様とドラコ様から、人間がこの集落を排除しようとしているということは聞きました……しかし、ワシ達オークは人間達に危害を与えていません」


 長老は訴えるようにそう言う。まぁ、そんなことを言ってくるだろうとは思っていた。


「長老さん。アナタの気持ちはわかります。そもそも、ここにいるオーク達は魔物のオークとは似て非なる存在ですよね。彼らはあくまで自分たちの生活に必要な分の狩猟しか行わないし、人間から略奪もしない」


「えぇ、その通りです……ですから、ソーマ様、どうか……人間たちの誤解を解いていただきたいのです」


 長老は深く頭を下げる。マオとドラコも俺のことを期待の視線を見てくる。


「……残念ながら、それは無理です」


 頭を深く下げた長老は、俺の残酷な言葉に対して、悲しそうな表情で、俺のことを見てくるのだった。

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