第78話 勇者と魔王とデリカシー

 それから、俺とマオは、セリシアとドラコと合流し、そのまま急ぎ足で村を出た。


 しばらく歩いて十分に村と距離をとり、俺たちは少し休憩する。


「そうですか……そんなことが……」


 宿屋で待機していたというセリシアは残念そうな顔でそう言う。


 俺はそんなセリシアを見てしまう。


「……どうかしましたか? ソーマ様」


 セリシアは不思議そうな顔で俺のことを見る。


「アナタ……本当に残念だと思っていますか?」


 そう言うとセリシアは目を丸くする。そして、少し嫌そうな顔で俺を見る。


「……意地の悪いことを仰るのですね。ソーマ様」


「いえ。俺は一応、人が本当に悲しんでいるのかどうか、なんとなくでわかるんですよ」


「それは……勇者のスキルで、ですか?」


「違います。俺自身のカンです」


 そう言うと、セリシアは小さくため息をつく。


「……そういうことでしたら、それこそ、勘違いです。私は悲しんでおります。ただ……そうなってしまっても不思議ではないことも知っています」


「つまり……人間が魔物を害としてしか認識していないってことですか?」


 そう言うとドラコがこちらを一瞬だけ見た。そういえば、ドラコはそもそも人間に一族を滅ぼされたんだったか。


「……勇者様。お言葉ですが、少しデリカシーがないのでは?」


 セリシアが少し怒り気味にそう言う。俺は特に気にしなかった。


 どうせ、セリシアやドラコにどう思われようが構いはしない。そもそも、俺自身が魔物山族を討伐する勇者なのだ。


「そうですかね? まぁ、とにかく、先を急ぎましょう」


「……その前に、魔王様に何か言葉をかけてあげるべきです」


 セリシアにそう言われマオの方見る。マオは、先ほどから膝を抱えたまま、座り込んでしまっていたのだった。

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