第63話 勇者と魔王と夜這い
そして、深夜。
既に俺以外は全員眠りについているはずだというのに、うごめく気配があった。
俺はスキル「気配察知」によって、その動きを感知することができた。
盗賊か、魔物か……いずれにしても俺が動きを把握しているので倒すことは容易だと思うが、それにしてはそれまで気配がなかったのに、いきなり動き出したのは不自然だった。
しばらく様子を見て、襲いかかってくるようだったら、俺も剣を抜くとしよう。
そのうごめく何者かは、ゆっくりと俺の方に近寄ってくるようだった。俺はしばらく様子を見ていたが……なんだか、動きが変だった。
こちらへ来るのかと思いきや、なぜか途中で止まり、止まったかと思うと、また動き出した。
そして、ついに何者かは俺の直ぐ側までやってきた。俺は剣に手をかける。
何者かは俺の顔にゆっくりと近づいてきた。その瞬間、俺は剣を抜き、何者かに突きつける。
「ひっ!?」
短く、聞き覚えのある悲鳴。
「……何しているんですか?」
何者か……ではなく、首筋に刃を突きつけられたマオが顔を引きつらせていた。
「あ、いや……そ、その……」
「また、俺の寝首をかこうとしたのですか? 言ったはずですが、それは無理で――」
「わ、儂のことを見よ!」
マオはいきなりそう言った。意味がわからなかったが、この世界の月明かりに照らされてマオの姿が見える。
その姿は俺よりも少し身長の低い少女の姿ではなく、なぜか等身の上がった……端的にいえば、それこそ、セリシアと似たような背格好になっていたのだった。
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