第64話 勇者と魔王と不釣り合い
「……えっと、どうしたんですか?」
俺がそう言うとマオは目を丸くして俺のことを見る。
「なっ……お、お主! なんじゃ! その反応は!」
なぜか酷く不機嫌そうにそう言うマオ。
「え……いや、だって……」
「見てわかるじゃろ!? この姿! どうじゃ!?」
そう言われて俺は今一度マオの姿を見る。
確かにこれまで共にここまで来たマオと違って俺より背が高く、出るところは出ていて引っ込む所は引っ込んでいるというか……まんま、セリシアの容姿を真似しているようにしか見えなかった。
「……アナタ、変身の魔法が使えたんですね」
「そうじゃ、儂は魔王じゃからな! 変化の魔法くらい使えて当然で……って、底ではない!」
またしてもまたそう叫ぶマオ。
「……夜ですよ。あまり大きな声を出さないで下さい」
「う~……てっきり、お主はこういう女が好きなのかと思って、わざわざ変身してやったというのに……」
「はい? なんか言いましたか?」
すると、マオは俺を不機嫌この上ない表情で睨みつける。
「なんでもない! いいか!? お主が頼んでも二度とこの姿に変身してやらぬからな!」
そう言うとマオはそのまま横になってしまった。俺はただ一方的に怒鳴られて罵倒されただけで、意味がわからなかった。
しかし、今一度先ほどのマオの姿を思い出してみる。
「……あんまり似合っていませんでしたね」
やはり、ポンコツ魔王にはポンコツ魔王にお似合いの容姿というものがある。
それになぜかは知らないが……いつもマオの姿の方が安心する。むしろ、先ほどのような変身した姿は……どことなく見ていて不安になるのだった。
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