第53話 勇者と魔王と同衾

「……また、あの夢ですか」


 差し込んだ朝日で俺は目を覚ます。


 何度も同じような夢を見るというのはなにかのメッセージだとは聞いたことがあるが……それにしたってよくわからない。


 いや、わからないというより……わかるのを拒んでいるような気もするが……あまり深く考えない方がいいだろう。


「それにしても、あのシスター……いえ、サキュバスは――」


「う~ん……ダメですよぉ……私はこれでも聖職者なんですから……」


 ……聞き覚えのある声が、隣から聞こえる。俺はゆっくりと視線をそちらに移す。


 見ると、いつの間にかシスター……ではなく、シスターのフリをしたサキュバスが、だらしない笑顔を浮かべながら、俺の隣で眠っていたのである。


 つまり、俺は今の今まで……サキュバスと同じベッドで眠っていたことになる。


「……え? な、なんですか、これ……」


「ソーマぁ! 起きたかのぉ!?」


 そして、次の瞬間、間髪入れずに大きな声が部屋に入り込んでくる。


 扉が開くとともに入ってきたのは……マオだった。


「……あ」


 マオが目にしたのは……同じベッドに入っている俺とサキュバスだった。


「う~ん……なんですか、朝から大きな声を出してはいけませんよ?」


 完全に硬直してしまったマオを他所に、寝ぼけながらサキュバスがゆっくりと身体を起こしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る