第54話 勇者と魔王と破廉恥
「で、ですから! 私はソーマ様のことをもっとよく知りたいと思っただけでして……勿論! ソーマ様の身体には指一本触れていませんよ!」
朝食の際、サキュバスは必死に笑顔でそう取り繕っていた。
……まぁ、身体にサキュバスから吸精された痕跡もないようだし、俺に触れていないのは本当だろう。
そもそも、おそらく触れていたのなら、俺ならば気付く。ベッドの中に入り込んできただけだから、気付けなかったのだろう。
「……破廉恥、じゃな」
そして、先程から、マオはなぜか俺のことを責めるような目つきで見ている。
「……あの、俺はどちらかというと、被害者なんですけど」
「じゃが、同じベッドで寝ていたのは事実なんじゃろう?」
……なんで俺が責められるような目に会わなければいけないのか。俺は今一度サキュバスの方を睨む。
「あ、あはは……で、でも……確かに同じベッドで寝ていたのは、事実ですね……」
そう言って、なぜかサキュバスは潤んだ瞳で俺のことを見る。
「……どういうつもりですか? まさか、俺の方がアナタに手を出したのではないか、とでも言いたいんですか?」
「そ、そんなつもりではありません! ですが、私もこれでも聖職者……同じベッドで寝てしまったという事実が存在する以上、その方と少なからず縁が出来てしまったということになります……よね?」
「……は? いや、そもそもアナタの方が勝手にベッドに入ってきただけで……というか、縁ってなんですか?」
俺がそう言うとサキュバスは申し訳無さそうに微笑む。
「で、ですから、このままソーマ様とお別れ、というわけにはいかなくなってしまったのです」
「それは……つまり?」
すると、サキュバスはいきなり立ち上がり、俺とマオに向かって頭を下げる。
「私を! お二人の旅に同行させて下さい!」
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