第49話 勇者と魔王と嘘

「え……それじゃあ……本当にマオ様は魔王なんですか!?」


 俺とマオがここまで来たことの経緯、そして、これから王都に行こうとしていることを、俺が説明すると、シスターは心底驚いたと様子でそう言った。


「だから……そう言ったじゃろうが」


 マオは完全に不貞てされてしまったようで、不機嫌そうにうつむいている。


「ですが、ソーマ様のお話が本当なら……魔王はすでに敗北したということに……」


「えぇ。この人はもう俺の下僕ですから」


 俺がそう言うと、マオは反論したそうに俺を睨んできたが……かといって、その通りのことなので、反論できないようだった。


「……ですが、王都につれていけばマオ様……いえ、魔王様は、確実に処刑されてしまうのでは……?」


 シスターがそう言うとマオは怯えた様子で俺のことを見る。実際俺もそう思うのだが……。


「じゃ、じゃが! この儂が直々に謝罪しようというのじゃぞ!? 人間共もそれ以上のことは求めないのではないか?」


「……ですが、魔王様。魔族や魔物は人間を大勢殺めてきました。人間は魔族や魔物に対して報復を考えているはずです。そんなところに、魔王様が謝罪をしにきたとなれば――」


「おそらく、嬲り殺しにされるでしょうね」


 俺がそう言うとマオの顔が青くなる。そして、いきなり俺の腕にしがみついてきた。


「ソーマ! 話が違うではないかぁ!」


 半泣きなりながらそう言うマオ。そのさまは哀れでもあり……少し面白く思ってしまった。


「大丈夫ですよ。俺がそうならないようにしますから」


「何……? 本当か!?」


「えぇ。本当です」


「そ……そうか! なら、安心じゃな! やはりお主は優しいヤツじゃな!」


 そう言って安堵したように微笑むマオ。俺が適当にそう言っているとは夢にも思っていないのだろう。


 と、そんなやり取りをシスターは少ししかめ面で見ているのに俺は気付く。


 それから、マオは眠いと言って先に部屋に戻ってしまっており、礼拝場には俺とシスターだけが残った。


「どうして、嘘をつくのですか?」


 マオが部屋に戻った直後に、俺はシスターにそう訊ねてきたのだった。

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