第48話 勇者と魔王と告白

 それから数時間後、俺たちは礼拝場に集まることになった。


「……しかし、シスターが魔族だったとは……まるで気付かなかったのぉ」


 驚いた様子でそう言うマオ。


「アナタと同じような魔法を使っていたわけですね。あの魔法、使えば魔族であることを完全に隠せるんですか?」


「うむ。ほぼほぼ魔族であることを見抜くことは不可能じゃな」


 確かに俺のスキル「鑑定」でも、シスターが実際はサキュバスであることを見抜くことはできなかった。


「しかし……あの魔法を使えるというのは珍しいのぉ」


「あれ、難しい魔法なんですか?」


「いや、簡単な魔法じゃよ? でも、普通は魔族が魔族であることを隠すなんてことしないからのぉ……使う者も少ない魔法なんじゃ」


「……まぁ、それもそうですね。じゃあ、なんで魔王であるアナタは使うんですか?」


「知らぬ。いつのまにか使えるようになっておったのじゃ」


 ……大方、自分の身分を隠したい魔族が使えるようになる魔法なのだろう。そう考えれば納得できる。


「お待たせしました」


 と、扉を開いてシスターが礼拝場に戻ってきた。


「ドラコを寝かしつけていたので遅くなってしまいました……それで、何からお話すればよいのでしょう?」


「お主、なぜ正体を隠しておったのじゃ?」


 マオがいきなりそう訊ねると、少し迷ったような顔をしたあとでシスターは鋭い目つきで俺たちを見る。


「……確かに私は正体を隠していました。しかし、ソーマ様とマオ様も、ご自身が何者であるのか、私にきちんとお話していませんよね?」


 シスターにそう言われ、マオは少し、戸惑った顔をする。


「俺は勇者です……といっても、元々は別の世界の人間でした。転生して、この世界に来たんです」


 いきなり俺がそう言うとシスターは驚いた顔をして俺を見る。


「転生……勇者……あぁ……どうしてでしょう……」


 そう言ってシスターは困った顔をする。


「……どうしました?」


「……何か……大事なことを忘れている気がするんです。それをおそらく……ソーマ様、いえ……勇者様にお伝えしないといけないことがあるのに……どうしても思い出せないんです」


 その戸惑っている様子は嘘をついているようには見えなかった。


 それじゃあ……先程言っていた元はサキュバスではないという言葉……あれも真実なのだろうか?


「シスターよ! 聞いて驚くな! 儂はな……実は魔王なのじゃ!」


 と、シスターが未だに混乱している最中に、得意げな顔でマオはそう言った。


 しばらくの間シスターは目を丸くしてマオを見ていた。と、ニッコリと笑顔になってマオの頭を撫でる。


「フフッ……すごいですね。マオ様は魔王なんですね~」


「なっ……! お、お主! 全然信じておらんじゃろ!」


 こうして、マオのせっかくの告白は、完全に子供扱いされてしまったのであった。

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