第47話 勇者と魔王と壁ドン

「……な、な……何をやっておるのじゃ!」


 マオが顔を真っ赤にして俺に迫ってくる。思わず俺はシスターを解放してしまった。


「何もしていません。ただ、話し合っていただけです」


「は、話し合っていたって……シスターを壁際に追い詰めていたではないか!」


 ……面倒な場面を見られてしまった。俺はちらりとシスターを見る。シスターの方はいつのまにか、角を隠してしまっていた。


「おい! 大丈夫か!?」


 と、マオがシスターに駆け寄っていく。


「ソーマに何か酷いことをされたのか?」


「い、いえ……そこまで酷いことは……」


「そこまで!? ソーマ! お主、やはり何かシスターにしたのか!?」


 マオが怒りを露にして俺に詰め寄る。俺は……なんだか馬鹿らしくなってきてしまった。


「その人、サキュバスですよ」


「……は? シスターが?」


 俺があっさりそう言うと、マオも怪訝そうな目でシスターのことを見る。


「あ、あはは……ごめんなさい」


 隠しきれないと思ったのか、シスターは再び頭部に魔族の証である角を出現させた。


「なっ……お、お主! 隠しておったのか!?」


「別にお互い様でしょ。アナタも魔族なんだから」


 俺がそう言うとマオは気まずそうな顔をする。今度はシスターが目を丸くする番だった。


「そうなの……ですか?」


 シスターにそう言われると、マオの頭にも程なくして角が出現する。シスターも先程のマオと同様に驚いていた。


「……まぁ、我々も隠し事をしていたわけですし、ここはいっそ、神の前ですべてを白状しましょうか」


 俺の提案に、マオとシスターは同時に恥ずかしそうに頷いたのだった。

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