第34話 勇者と魔王とシスター

「……本当に教会があったのぉ」


 心底嫌そうな表情でマオはそう言った。


「そりゃあそうでしょう。俺のスキルに間違いはありませんから」


「……まぁ、まだ人がいるかどうかはわからんからな」


 そう言ってマオは俺の方を見る。


「……なんですか? なぜ俺を見るんです?」


「いや……その……この教会が無人ならば良いが……もし、この前出くわした輩のような者共がねぐらにしていたら……どうじゃ?」


 この前出くわした輩……しばらく思い出すのに時間がかかってしまったが、この前盗賊に襲われそうになったことを言っているのかと俺は少ししてから理解した。


「……要するに、中に入るのが怖いってことですね」


「なっ……! そ、そういうわけではない! そういうわけではないのじゃが……のぉ?」


 マオはまたしても媚びるように笑う。俺はわざとらしく大きくため息をついてそれに返した。


「わかりました。教会の外で待っていて下さい。ただし、待っている間に盗賊に襲われても、俺は助けられませんよ」


「わ、わかっておるわ! まったく……」


 マオは教会の外で待っているということで、俺は教会の扉の前に立った。


 随分と古い教会のようだ。魔王の城に行くまでには存在に気付かなかった。


 俺はゆっくりと扉を押す。扉は見た目よりも簡単に開いた。


 教会の中は少し埃っぽかったが……見た感じで手入れがされているようだ。


「……誰かいるみたいですね」


「どなたですか?」


 と、俺が入ると同時に、どこからか声がしてきた。見ると、並んでいる礼拝席の最前列に修道服姿の女性が座っていて、険しい顔でこちらを見ている。


「あ……すいません。俺は旅のものでして……」


「あぁ。そうでしたか。ようこそ、いらっしゃいました。私はこの教会のシスターです」


 そう言って、シスターはニッコリと俺に微笑んだのだった。

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