第32話 勇者と魔王と夢(2)

「おい! お主からこの前借りたゲーム、とても面白かったぞ!」


 ……まただ。また、俺は夢を見ていた。


 転生する前の夢。しかも、今回はこの前見た夢の続きのようである。


「そうですか。それは良かったですね」


「うむ! 儂はゲームなんて初めてやったからのぉ……何度もゲームオーバーになったが、儂は諦めなかった! そして、ついに魔王を倒しのじゃ!」


 顔の見えない女の子は、とてもうれしそうな声でそう言う。


 俺はその子に、テレビゲームかなにかを貸していたらしい。


「しかし……魔王の名前、なんだか、お主の名前に似ていたのぉ」


「……俺の名前、知っているんですか?」


 俺がそう言うと女の子の顔は見えなかったが、キョトンとした顔で俺を見ているようだった。


「当たり前じゃ。同じクラスメイトではないか。そうじゃろう? ソーマよ」


 誰かに名前を呼ばれるのは……少なくとも、同年代の子に名前を呼ばれるのは初めてだった気がする。


「まぁ……儂の名前も、なんだか魔王みたいな名前じゃけどな」


「……すいません。俺、アナタの名前、知らないです」


「な、何!? お主……はぁ、まったく。仕方のないヤツじゃなぁ。良いか? 儂の名前は――」


 女の子が名乗った名前は俺には聞こえなかった。そして、そのまま夢の世界はまるで霧のように消え去ってしまったのだった。

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