第25話 勇者と魔王と孤独
部屋に通されると、またしてもマオはベッドに思いっきり飛び込んだ。
「おぉ! この前の村よりも寝心地が良いな!」
マオは満足げにベッドの感触を楽しんでいるようである。
「そりゃあ、あのお爺さんが管理しているんでしょうから、誰も使わなくなった村のベッドよりかは寝心地が良いでしょう」
「ふむ……この村にはあの老人しか住んでいないのか?」
マオにそう言われて俺も少し気になった。確かに、この宿屋以外の建物に、どうにも人の気配を感じなかったのである。
「少し、外を確認してみますか」
そう言って俺が部屋を出ようとすると、慌ててマオが俺の背中に近づいてくる。
「……別に俺一人で行くので、寝ててもいいですよ?」
「ふ、ふふふ……別に一人が怖いのではないぞ? 儂が付いていないと、お主が心配じゃからな」
わざとらしい笑い方をしながらマオはそう言う。それ以上突っ込むの馬鹿らしかったので、俺はそのまま部屋を出た。
「あ……お出かけですか?」
受付を通る時、老人が俺に話しかけてきた。
「この村、アナタ以外に住んでいる人はいるんですか?」
俺がそう聞くと、老人は少し困っていたようだったが、視線を落として返答する。
「……昔は、そんなことはなかったのですが、今ではワシ一人だけのようですな」
「なっ……本当にお主一人だけなのか!?」
マオが驚いた様子で訊ねる。老人もいきなりマオにそんなことを聞かれて驚いていたが、苦笑いしながら先を続ける。
「えぇ、まぁ……他の住人は新しく住む場所を探して出ていってしまったのですが……ワシにはもうここ以外、住む場所なんて考えられなかったので」
「そ、そうか……寂しく、ないのか?」
マオがそう訊ねると、老人はしばらく黙ったままだったが、無理に笑顔を作って答える。
「えぇ……もう、慣れましたから」
老人のその言葉にマオは言葉を失っていた。
「少し、外に出てきます」
俺が扉を開けて外に出ると、少し遅れてマオも外に出たのだった。
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