第24話 勇者と魔王と老人
俺は少し予想をしていた。
この世界では貧富の格差はかなり高いようであった。それは今までの旅でもなんとなくわかってきていた。
小さな村などではその日の食べ物を得るのも苦労するようで、いくつもの小さな村が飢えを凌ぐのに苦労しているのを見てきた。
無論、俺にとっては……関係のないことだった。だから、俺はそれらをずっと無視して、魔王の城を目指し続けた。
「こ、ここが……人間が住む村なのか?」
近くにあるといった村に、俺とマオは辿り着いた。
正直、先日立ち寄った無人の村と対して変わらない状態だった。窓ガラスも割れている家が多いし、人々が外を出歩いている様子はない。
「お、おい! ソーマ! お主、また儂を騙したのか?」
マオが怒り気味にそう言う。しかし、俺は首を横にふる。
「いえ。騙していませんよ。この村には人がいます。もっとも……無人の村と対して差はないようですね」
俺はそう言って村を探索することにした。マオも仕方なく俺の少し後をついてくる。
しばらく歩くと、宿屋らしき場所があった。かなりボロボロの建物だが……一応、人の気配を感じることができる。
「……ここに本当に人がいるのか?」
「えぇ。いますよ。だから、魔王ってこと、バラさないでくださいね」
俺がそう忠告すると、マオはふくれっ面で俺を見る。そんなマオを無視して俺は宿屋の中に入っていく。
家屋の中にはいると、受付らしき場所に一人の老人が座っていた。
「……ん? おや……珍しい。お客様ですか?」
力なく微笑む老人。俺は構わずに先を続ける。
「ここ、泊まることができますよね?」
「えぇ、汚らしい場所ですが、問題なく泊まることができますよ」
「わかりました。宿賃は……こんなものでよいですかね?」
俺が金貨一枚を取り出すと、老人の目の色が変る。
「え……お、お客様……こんな……こんな大金は……」
「いらないですか? では――」
「あ! ま、待って下さい! いただきます!」
老人はそう言って金貨を俺から奪うように懐にしまった。
「あはは……お部屋はどちらを使っても問題ございません。あとでお食事をお持ちしますので……」
老人はニヤニヤしながら俺のことを見ている。
「……ふむ。中々優しそうな人間だったな」
マオは満足そうにそう言う。なんとも……この魔王はどこまでもお気楽なのだと思ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます