第23話 勇者と魔王と能天気

「おい! いつまで寝ておるのじゃ!」


 翌朝、俺はマオの声で目を覚ました。すでにマオは起き上がって馬鹿にしたような顔で俺を見ている。


「随分と良い夢でも見ておったのか? 儂が何度起こしても起きなかったぞ?」


「……いえ。最悪な夢を見ていました」


「何? どんな夢じゃ?」


 と、俺はマオのことをジッと見つめる。


「な、なんじゃ? そんなに見られると照れるのじゃが……」


「アナタの夢です」


「え……わ、儂の夢? な、なんじゃそれは……なんだか、恥ずかしいのぉ」


「……アナタが王国で処刑されて、その返り血を浴びる夢でした。不快でしたよ」


 俺がそう言うと先程まで少し嬉しそうな顔をしていたマオが、一気に不機嫌そうになる。俺はそれ以上は何も言わずに身支度を整える。


「ほら。行きますよ。さっさと王国に行ってその夢を現実にしますから」


「な、何!? 儂は処刑されるのか? 謝るだけと言ったではないか!」


「さぁ? 最悪の場合、処刑されるかもって話ですね」


 俺がそう言うとマオはふくれっ面をしながらも、俺のあとをついて来る。


 無人の村をでてからはまた歩き続けることになった。マオはもう文句は言わなくなったが、それでもあまり長距地は歩けないことはわかっていた。


 数日後、野宿をしていた時に俺は切り出した。


「ここから少し先に村があります。俺のスキルで確認しました」


「……また、無人の村か?」


「そこまではわかりませんが、大分魔界からも離れましたし、人間がいるのではないでしょうか?」


「……そうか! 久しぶりにまともな食事ができそうじゃな!」


 嬉しそうな顔をしているマオを見ていると、能天気というのはこういう事を言うのかと思ってしまうのであった。

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