第22話 勇者と魔王と夢(1)

「お主、いつも一人じゃな~。寂しくないのか?」


 それが夢だと理解するのに数秒もかからなかった。


 転生する前にいた世界の学校、そして、俺もその時に着ていた制服を着ていた。


「うむ……それなら、儂が友達になってやろう! 儂は優しいからなぁ~。お主のような寂しい人間でも友達になってやるのじゃな!」


 これは……俺の記憶だ。しかも、今の記憶じゃない。転生する前の記憶だ。


 学校でしきりに話しかけてくる隣の席の女の子がいたのだ。夢ではその女の子が俺にしきりに話しかけてきていた。


 顔は……なぜか見えなかった。まるでそこだけ思い出すのを躊躇っているようである。


 その子がまた俺に話しかけてきている。その子の話し方はとても独特で、なぜかやたら俺に絡んできていた。


 正直、俺としては面倒くさいとしか思えなかった。変な話し方も気になったし、何より、俺なんかにかまってくるのが不思議でならなかった。


 だから、俺は女の子のことをずっと無視していた。だけど、女の子はずっと俺に話しかけてきていた。


 そして、ある日、俺は聞いてしまったのだ。


「……どうして、俺に構うんですか?」


 すると、女の子は嬉しそうに笑顔で俺に言った。


「やっと、話してくれたのぉ」


 女の子の笑顔も……やはりそこだけ見えなかった。思い出そうとしても思い出せなかった。

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