第22話 勇者と魔王と夢(1)
「お主、いつも一人じゃな~。寂しくないのか?」
それが夢だと理解するのに数秒もかからなかった。
転生する前にいた世界の学校、そして、俺もその時に着ていた制服を着ていた。
「うむ……それなら、儂が友達になってやろう! 儂は優しいからなぁ~。お主のような寂しい人間でも友達になってやるのじゃな!」
これは……俺の記憶だ。しかも、今の記憶じゃない。転生する前の記憶だ。
学校でしきりに話しかけてくる隣の席の女の子がいたのだ。夢ではその女の子が俺にしきりに話しかけてきていた。
顔は……なぜか見えなかった。まるでそこだけ思い出すのを躊躇っているようである。
その子がまた俺に話しかけてきている。その子の話し方はとても独特で、なぜかやたら俺に絡んできていた。
正直、俺としては面倒くさいとしか思えなかった。変な話し方も気になったし、何より、俺なんかにかまってくるのが不思議でならなかった。
だから、俺は女の子のことをずっと無視していた。だけど、女の子はずっと俺に話しかけてきていた。
そして、ある日、俺は聞いてしまったのだ。
「……どうして、俺に構うんですか?」
すると、女の子は嬉しそうに笑顔で俺に言った。
「やっと、話してくれたのぉ」
女の子の笑顔も……やはりそこだけ見えなかった。思い出そうとしても思い出せなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます