第13話 勇者と魔王と魔界の外

「……ここが魔界の果て、じゃな」


 そう言って、魔王は立ち止まる。目の前には透明な壁のようなものがあった。


 魔界の果て……人間の王国では境界線と呼んでいた気がする。


 魔物の進行が激しくなるにつれて、この魔界の範囲が広がっていくということだったらしいが、この境界線がこれ以上拡大することはないのだろう。


「ここを出れば、魔界の外……人間の世界、ということじゃな」


「なんですか? もしかして……怖いんですか?」


 俺がそう言うと魔王はムッとした顔で俺を睨む。


「怖いなど……そんなことはない。ただ……初めて見たから驚いているだけじゃ」


「そうですか。俺は別にここを乗り越えるときも何も感じませんでしたけどね」


 俺がそう言うと、魔王はさらに嫌そうな顔をする。実際、魔界への境界線を超える時何も感じなかったし、そもそも、記憶がない。


 俺は特に考えずに、境界線を跨いでいく。なぜか魔王は一歩踏み出すのを躊躇っているようだった。


「何しているんですか? 早く来てください」


 俺がそう言っても魔王は戸惑っているようだった。俺は剣を抜いて魔王に差し向ける。


「あまり手をかけさせないでくれませんかね?」


 俺がそう言うと、魔王は渋々境界線を跨ぐ一歩を踏み出した。


「……ここが魔界の外か」


 魔王はそう言って周囲を見回している。何が珍しいのかわからないが……少し感動しているようにも見えた。


「ほら、行きますよ」


 俺がそう言って歩き出すと、魔王もその後を慌ててついてくる。


 こうして俺と魔王は魔界を抜け出したのであった。

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