第13話 勇者と魔王と魔界の外
「……ここが魔界の果て、じゃな」
そう言って、魔王は立ち止まる。目の前には透明な壁のようなものがあった。
魔界の果て……人間の王国では境界線と呼んでいた気がする。
魔物の進行が激しくなるにつれて、この魔界の範囲が広がっていくということだったらしいが、この境界線がこれ以上拡大することはないのだろう。
「ここを出れば、魔界の外……人間の世界、ということじゃな」
「なんですか? もしかして……怖いんですか?」
俺がそう言うと魔王はムッとした顔で俺を睨む。
「怖いなど……そんなことはない。ただ……初めて見たから驚いているだけじゃ」
「そうですか。俺は別にここを乗り越えるときも何も感じませんでしたけどね」
俺がそう言うと、魔王はさらに嫌そうな顔をする。実際、魔界への境界線を超える時何も感じなかったし、そもそも、記憶がない。
俺は特に考えずに、境界線を跨いでいく。なぜか魔王は一歩踏み出すのを躊躇っているようだった。
「何しているんですか? 早く来てください」
俺がそう言っても魔王は戸惑っているようだった。俺は剣を抜いて魔王に差し向ける。
「あまり手をかけさせないでくれませんかね?」
俺がそう言うと、魔王は渋々境界線を跨ぐ一歩を踏み出した。
「……ここが魔界の外か」
魔王はそう言って周囲を見回している。何が珍しいのかわからないが……少し感動しているようにも見えた。
「ほら、行きますよ」
俺がそう言って歩き出すと、魔王もその後を慌ててついてくる。
こうして俺と魔王は魔界を抜け出したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます