第14話 勇者と魔王と疲労
魔界を出てから、俺と魔王はひたすら歩き続けた。
俺としては一刻も早く王国にたどり着きたかったので、ひたすら無心で歩き続けた。
見た目は少女であっても、一応は魔王。どれだけ歩かせても体力は持つと思っていたのだ。
思っていたのだが――
「ちょ……ちょっと待ってほしいのじゃ……」
数日無言で歩き続けた頃、魔王のか細い声が聞こえてきた。
俺はゆっくりと振り返る。そこには魔王がフラフラとしながらよろけていた。
「なんですか。もしかして……疲れたのですか?」
「……ち、違う。す、少し……足が痛いだけじゃ」
「それを疲れたっていうんですよ。休みたいんですか?」
俺がそういうと魔王は哀願するような目つきで俺を見る。俺はわざとらしくため息をついてみせる。
「そういうことなら、お願いしてもらいませんかね? 休ませてください、って」
俺がそう言うと魔王は少し躊躇ったが、よほど疲れていたのかゆっくりと頭を下げる。
「……休ませてほしいのじゃ」
……なんだかあまりにもあっけなく頭を下げてきたので、張り合いがなかった。
俺としてももう少し抵抗するかと思ったが……ここまで呆気ないと俺も承諾するしかなかった。
「……仕方ないですね。じゃあ、今日はここで休みましょう」
「何? こ、ここで休むのか?」
「そりゃあ……ここらへんには街も何もありませんからね。ここで休むしかないでしょう」
魔王は絶句する。どういう考えかわからないが、少なくとも野宿するとは考えもしていなかったのだろう。
「こ、この地面で寝るのか? わ、儂は魔王じゃぞ?」
「別にいいですよ。寝たくないなら、このまま歩き続けても」
魔王も流石にそれは嫌だったようである。渋々その場に座り込む。
「……休めれば何でも良い。ここで休むぞ」
結局、俺と魔王はその夜はそこで野宿することになったのであった。
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