第12話 勇者と魔王と初めての外出
それから、しばらく魔界を二人で歩くことになった。
魔界というのはなんとも寂しい場所である。魔王の城以外に建築物はない。
「そういえば、アナタは魔界から出たことってあるんですか?」
俺は気になって魔王に訊ねる。
「魔界の外など……儂は出たことはない。というか、城から出た事自体ないのじゃ」
「え……生まれてからずっと、ですか?」
「……そうじゃ。儂は外に出るなと部下にも言われておったのじゃ」
どうりでさっきからやたら周囲をキョロキョロ見回しているわけか。
「じゃあ、人間を見るのも俺が初めてってことですか?」
「……残念ながら、お主が初めて見る人間じゃな」
嫌そうな顔を俺に向ける魔王。まぁ、俺としても魔王を見るのは初めてだったわけだが。
「そうですか。じゃあ、アナタは人間を殺したりしたことはないんですね」
「あぁ……儂自らが手を下したことはない。配下の者たちが人間と戦ってくれてはいるようだが……」
「そうですか。じゃあ、皆さん、きっとがっかりするでしょうね。自分の信じている魔王が勇者の下僕に成り下がったことを知ったら」
俺がそう言うと魔王は悔しそうに顔を紅くする。何か言いたそうに俺を睨んでいたが、何も言わなかった。
「……今はこのような状況じゃが、このままでは終わらんぞ」
「どうやって? アナタの有力な部下を大体俺が倒しちゃったんですよ?」
それ以上魔王は何も言わなかった。まぁ、あまり責め過ぎて喋らなくなってしまっても、俺としてはつまらない。
せめて王国にたどり着く道中の間は、この魔王で楽しませてもらうことにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます