第3話 勇者と魔王と責任

「アナタ、さっきは、下僕になったら、なんでも言うことを聞くって言いましたよね?」


「そ、それはそうじゃが……流石に酷いのではないか? いきなり死ね、など……それでは下僕になった意味がないじゃろう?」


 ……いちいち、屁理屈が多い魔王である。流石に俺ももっとはっきりと言ってやったほうがいい気がしてきた。


「あのですね。俺はアナタを抹殺する命令をこの世界の王様から受けてここまでやってきたんです。だから、アナタが何をしようとアナタをこの世から抹殺しなければ、命令を受けた俺の立場が悪くなるんですよ」


「そ、そんな……儂が一体何をしたというんじゃ!」


 と、自分がどうあがいても殺されそうなことを悟ったのか、魔王が逆ギレを開始する。


「色々したじゃないですか。魔王軍は世界中で人間を殺したり、土地を荒らしたり」


「それは人間共だってそうじゃろう! 第一儂は側近共がそのようにしろと言うからしただけじゃ! 儂がしたいからそうしたのではない!」


 涙目になりながらそう言う魔王。なるほど……どうやら、この魔王はほとんどお飾りで、実際は側近の幹部クラスの魔物が魔王軍を動かしていたということか。


 そして、すでにその幹部クラスも全員残らず俺が抹殺してしまったわけだが。


「つまり、自分に責任はないって言いたんですか?」


「そ、そういうわけではないが……わ、儂だけに全ての責任があるというのはおかしいと言っておるのじゃ!」


 普通、こういうときは魔王が全ての根源だと責任を負ってくれるものだが……どうやら、目の前のこのヘタレ魔王にはそういう気持ちはないらしい。


 俺は思わず大きくため息を付いてしまった。


「わかりました。もういいです」


「え……お、おい! なんじゃ、その態度! 儂のことを馬鹿にしておるのか!?」


「えぇ。馬鹿にしています」


 俺がそう言うと悔しそうな顔で俺を睨む魔王。実際馬鹿にしているので、俺としても否定はしないのであった。

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