赤い部屋 4

 一通りリビングで怪しいものを視終わった亞美と玲汰は、百子に「何を問われても返事はしないこと」と、「植木鉢は然るべき場所で供養してもらうように」伝えた。


ネットで調べれば、そういったものを扱っている寺や神社の情報はすぐ手に入る。植木鉢に触れると何が起こるか定かではない事に関しては、出張祈祷なんていうものもあるので、それを頼めばいい。値は張るが、背に腹は代えられない。


 一応、霊は出ないというが、同じ花屋でもらった球根を育てているという奈津美にも、問題ないようならすぐ手放したほうが良いとも言っておいた。


 どうやら今晩は、百子はこの家に居たくないということで奈津美の家へ泊まることになったらしい。奈津美は「親は海外旅行中だから気にしないで。もらった花はすぐに捨てるから、安心してウチにおいで」と言っていた。


 片尾家を出る前、最後に玲汰は「気休めだけど」と前置きして、霊への対策として“匂い”と“盛り塩”について説明していた。悪霊は腐敗臭など死の臭いを好み、逆に香水などの良い香りを嫌うのだという。また、盛り塩は部屋の入口に置いておけば侵入を防ぐ効果もあり、使うものは天然の塩が効果的だ、と。端から見れば胡散臭い事この上なかったが、亞美は、香水に霊を除ける効果があると聞いて一人ひっそりと驚いていた。


***


 片尾家を出る頃には日も暮れて、辺りの家々には明かりが灯っていた。


 亞美が「結局ホントにただ視ただけで何も解決はできなかったな」と呟くと、玲汰は「元々そういう話だったんだからいいだろ」と、何も気にしていない様子だった。


 その後、しばらくは会話もなしに駅までの道のりを歩いていると、左手に商店街が見えた。人通りは少なく、営業している店もほとんど無いように見受けられる。百子が言っていた花屋も、この近くにあると言っていたはずだ。


「じゃあ、気を付けてな」


 突然、玲汰はそれだけ言って、駅とは反対方向、商店街の方へと歩を向けて去ろうとした。


「ちょっと、どこ行くの? 駅こっちだよ?」


「花屋を見てくる」


 振り返りもせずに、手をひらひらさせて離れて行く玲汰。亞美はすぐに後を追った。


「何であたしを放っておくんだよ」


「ビビってたから」


「ビビってない!」


 また脛を蹴飛ばした。きっと腫れあがっていることだろう。


「ってーな、さっきから! どうなっても知らねーぞ」


 結局、亞美は花屋に向かう玲汰に着いて行った。


 最初はあまり乗り気でなかったこの件も、いざ百子の家でそれを視てみた結果、あまり役に立てなかったなと思ったのが本心だった。そのせいで心にもやもやが残った。花屋へ同行して、何か分かる事があるのなら、そのもやもやも多少晴れるのではないかと思ったのだ。


 本音は、あんな禍々しい霊を視て、日も暮れたこんな時間に一人の家に帰るのが怖くなったというのが一番の理由だった。結局それよりも恐ろしいかもしれない場所に行く事になったが、似た霊感を持つ彼と居ればまだ大丈夫な気がした。


「ただ花屋に行くだけじゃん。何にもビビる理由なんて無いし」


「何強がってんだよ」


「あ?」


「ガラ悪すぎ……」


 くだらない言い合いをしながら商店街を通り抜け、裏側へ回って一本道の通路を進み、例の花屋を探した。


 古びた木造の建物が並んだその通りには人気はなく、とても営業している花屋があるとは思えなかった。それに、街灯の一本も設置されていない為に暗い。


 結果、十五分ほどで端から端まで歩き切ってしまい、その間に花屋なんて、そもそも営業している店の一軒だって見つけることができなかった。


 探す場所を間違ったのかと思ったが、しかし百子に聞いた通りの場所で合っているはずだ。もう一度だけ通ってみようという話になったが、その前にまず商店街で「近所に花屋はないか」と尋ねてみようと亞美が言った。


「あぁ、花屋なら大隈さんとこだね。残念だけどもう結構前に閉めちまったよ」


 魚屋で働く白髪の中年男性はそう言った。


 閉店したのは四年ほど前の事らしい。なんでも、そこの店主は母親が亡くなってからその店を継いだらしく、婚約相手も居たがその人の浮気が発覚し、それを気に病んだ結果自宅で自殺した、というのだ。


「婚約者の方も浮気相手と一緒に失踪したらしくてね。駆け落ちだとか、心中だとか──」


 他人の不幸話をよくも楽しそうにべらべらと喋るな、と亞美は思った。


 最後に彼は、近場にはそれ以外で花屋はないよと言った。


 この商店街付近では唯一の花屋は営業をしてない。なら、百子は一体どの店の誰に、球根を貰ったというのだろう。


 亞美と玲汰は再び、注意深く建物一軒一軒を確認しながら、二度目の通路を進んだ。魚屋に聞いた場所まで来るとそれはあっさりと見つかった。


「あった」と玲汰がぼそっと呟く。


 彼が見ている建物。色あせて変色し、ところどころ穴が開いて破けた雨除けをつけたそれは、掠れた字で「フラワーショップ大隈」と書かれていた。降りているシャッターは錆びていて、おまけに黒いスプレーで落書きがされている。とても営業している風ではない。


 百子は本当にここで球根を譲ってもらったのだろうか。だとするなら、彼女は幻覚を見ていたというのか。いや、視せられていた、のほうが正しいかもしれない。では、一体何に──。


「おしゃパン、何か視えたりするか?」


「それ、やめてよ。つか略すな」


 言われて、亞美は改めて店を視た。


「特に寂れた建物ってだけで、周辺に何かが徘徊してるとかはないかな。百子ちゃんとこに居た霊も見当たんない」


 とはいえ、この時間帯に、しかも禍々しい霊を視た後だ。普段は何でもないだろうが、この建物が今は非常に不気味に感じる。魚屋の話が本当ならば、ここで人が死んでいるのだからある意味で心霊スポットだ。


 百子と奈津美が球根を譲ってくれた花屋は、数年前に既に閉店していた。この事実を、本人たちに伝えるべきか、否か。亞美がスマホを片手に迷っていると、玲汰はその花屋と隣の建物の間にある細い通路へと入り込もうとしていた。


「おっ、置いてくな!」


 一体どこへ向かうつもりなのか。とっさに追いかけると、玲汰は花屋の周囲にある窓の施錠を次々に確認していった。左側の窓から裏口まで全て閉まっていて、開きそうにない。反対へ回り、高い位置にあるそこへ手をかける。すると、ザリザリと砂埃を噛みながら動いた。覗き込むと、そこは浴室のようだった。


「帰ってていいよ」


 振り向きもせず言い放って、玲汰はあっという間に建物の中へと姿を消してしまった。


 読書と執筆が趣味らしい、おとなしそうな顔をした彼が意外にも大胆な行動を取った事に少し感心した。


 一方で、人は居なさそうとはいえ、侵入するのは誰かに見られでもすれば犯罪になる。それを彼は何の躊躇いもなく……。


 玲汰は霊を察知できるといっても、はっきりと認知できるわけではない。この花屋周辺に徘徊している霊が居ない事は確認できたが、建物内の事は分からない。知らずの内に干渉してしまって結果、害を被る可能性だってある。それに今回の件で彼を巻き込んだのは亞美自身だ。さすがにこれはやり過ぎではないかと思うが、手前、このまま素直に帰ってしまうのも無責任に思うし、何より自分が“ビビリ”だと認めているように思えて癪だった。


 亞美はタバコを一本吸った後、「どうにでもなれ」と心の中で叫んで、窓の中へと飛び込んだ。


***


 入ってすぐに後悔した。カビ臭くてすぐ浴室から脱衣所に出たが、廊下へ出ても先に入って行った玲汰の姿がどこにも見えない。それに、この建物の中いっぱいに、先刻片尾家でした異臭が充満していて最悪だ。


 とにかく玲汰と合流したい。スマホのライトを頼りに、亞美は中を歩き回った。


 脱衣所を出て左右に続く廊下の右手奥にある部屋はきれいに片付いていて、花ばさみやオアシス、落としなどが整理して置かれていた。左手、店の正面に向かうと、段差の先にはたくさんの棚と植木鉢が並んだスペースがあった。シャッターを開ければ先ほど歩いていた通りに面しているはず。


 かつてはここに色とりどりの植物が並んでいたのだろうと思われるが、今では紙くずのような、乾燥して茶色く変色した成れの果てが散らばっているだけだ。物寂しさを感じる。


 そういえばここは外観からして二階建てのはずなのだが、階段が見当たらなかった。もしかすると、玲汰は先にそれを見つけて上がっているのかもしれない。


 そうだ、スマホで連絡を取ろうとしてメッセージを送ったが、一向に返事は来ない。


 外へ出て待っていようか。そう思ったとき、枯れた花々が並んだ棚が揺れ、黒い影が動いた。


 亞美は思わず大きく飛び跳ねた。手汗でスマホを滑り落としそうになった。


 ネズミだろうか、それとも野良猫でも忍び込んでいたか。それとも──。


 首を引っ込めて姿勢を低くしたまま、恐る恐るライトでその棚を照らす。すると、


「なんだ、おしゃパンも来たのか」


 玲汰だった。


「もう、脅かさないでよ!」


 走り寄って背中を思いきりはたいた。気持ちの良い音が室内に響く。


「お前が勝手に驚いたんだろ」


「そんなんどうだっていいから、さっさと調べるもん調べて出ようよ」


 玲汰は腑に落ちなさそうな顔だったが、黙って調査を再開した。


「で、何を探してんの」


「何って……片尾さんと長田さんがもらったっていう球根、まだ残ってんじゃないかなって」


「もしあったとして、そんなのどうすんのよ」


「さぁ……育ててみるか、焼いてみるか」


「さっきからアンタの行動力すごいわ」


 奈津美は百子より先にここで球根を店主からもらい、それを聞いて百子もここを訪れ譲ってもらった。片尾家に出た男性の、恐らく大隈と思われる霊は、その球根が植えられた植木鉢に触ろうとすると動き始める。玲汰は、その球根に何かがあると踏んでいるのだろう。


「もしその球根に何かあるとするなら、どうして奈津美ちゃんの所には何も出ないの」


 大隈と思われる霊が出るのは片尾家だけで、長田家に出たとは聞いていない。悩まされているのは百子だけだった。


 玲汰は通路の壁に引き戸があるのを見つけると、躊躇なく開いた。その先には、二階へ続く階段があった。まるで自宅のように堂々と上っていく。


「様子、ヘンだったろ」


「確かに、奈津美ちゃんも百子ちゃんと同じで雰囲気が暗くて目元にくま作ってたけど……」


 玲汰の後を着いて亞美も上ってゆく。


 二階は居住スペースのようで、一目見た印象は“赤い部屋”だった。ワンルームにはブラウン管の赤いテレビと赤い卓袱台、その上と足元にカップ麺のゴミやらが散らばっていて、ゴミ屋敷の一歩手前といった散らかり様だ。中央の赤い敷布団には黒い大きなしみができていた。


 大隈はここで首を吊って死んだのだろうか。とにかく、赤い物が多い。亞美にとっては今すぐにでも飛び出したくなる空間だった。なるべく目を細めて見ないようにする。


「……百子ちゃんとまるで同じ雰囲気だったもんね」


「多分、同じような事が長田さんとこにも起こってんじゃないかな。ただ、何か言えないような事情があるとか……ただの推測だけど」


 言いながら、玲汰は部屋の中を見て回った。すると、ゴミの中に立つ卓袱台の前で止まって、そこに置いてあった何かを手に取り、亞美を呼んだ。


 見てくれ、と差し出されたそれを受け取る。写真だ。男女二人が写っている。その女性の方は赤い花の束を手に微笑んでいた。そしてそれは、二人にとって非常に見覚えのある風貌をしている。


「片尾百子に似てないか」


 瓜二つというほどではない。それでも、垂れ目に丸い鼻、薄い唇、そしておさげの髪型。ところどころのパーツが似通っていて、百子が大人になるとこんな風になるのではと思わせる要素が揃っている。という事は“結ばれなかった相手にそっくりな片尾百子に執着”して、彼女の元に霊として大隈が出没している、ということだろうか。


 可能性は非常に高いのではと亞美は思った。何せ、この写真は女性の部分は切り貼りされたものだからだ。そして、女性の衣服は赤を基調としていた。


 ……本当にこの女性は婚約者だったのだろうか。


 想像すると触っていたくなくて、とっさに写真を元の場所へと戻した。


 今すぐ手を洗いたい気分になってきた。タバコも吸いたい。汗もかいたしシャワーも浴びたい。とにかく、ここを出たくてそわそわしはじめた。


 色々分かってきたし、もう出よう。玲汰にそう言おうとして、この色あせた部屋の中に一点だけ、このごみ溜めでは浮いている物がある事に気付き、それに近寄った。


 最初は造花かと思ったが、近くで見て本物だと分かった。鮮やかな赤い花びらをつけている。


「それは?」


「アネモネ……っぽいけど」


 アネモネはほとんどが春に咲く。夏から今の時期である秋にかけて咲く品種もあるがそれは白い花を咲かせる。百子のものはまだ芽だったが、奈津美が咲いたと言っていたものは赤い花びらだった。育成を始めた時期はもっと前と考えると、微妙に時期がズレている。それに、ここにある花は一体、誰が育てたというのだろうか。


 そんな事を玲汰に話すと、


「でも確かに咲いてる。やっぱり何か関係あるんだ」


 玲汰はその辺にあったビニール袋を手に取ってその花を植木鉢ごと突っ込み、持ち帰ると言い出した。


「えっ、ちょっと。持って帰る気?」


「調子の悪そうな二人の共通点だ。おれが持って帰って確かめてみる」


「やめた方がいいって。危ないよ。ていうか、おかしい点もあるけどさ、ここで誰かが育ててるのかもしれないんだし。勝手に持ってくのはヤバいでしょ」


 不法侵入の上、窃盗。立派な犯罪だ。


「今更だ。それに、こんな場所で一体誰が花を一つだけ育てるっていうんだ。それに気にならないのか? 結局視ただけで何も解決してないんだぞ」


「元々視るだけの約束だったじゃん。アンタだってそう言ってたでしょ」


 お互い沈黙し、気まずい空気が流れた。


「……勝手にしたら。あたし、知らないから」


「別に構わないよ。ただの昨日、今日の関係だろ」


 その玲汰の冷たい言葉に、亞美の脳裏に過去の出来事がフラッシュバックして、ついカチンときてしまった。


「なに、その言い方!」


「何で怒ってんだよ」


 ワケが分からないといった様子でため息をつく玲汰。


 つい怒鳴ってしまった事に自分でも驚いたが、もうどうしようもない。


「……っ、知らない! 私、もう帰るから!」


 困惑する彼に背を向けると、階段を駆け下りて浴室に向かい、窓から外へ飛び出した。


 怒鳴った勢いで沸いた熱も冷めやらぬまま、足早にフラワーショップから離れてゆく。


 足は駅へと向かっていた。


 別に玲汰が悪いわけではない。法的には悪いのだが──そういう意味ではなく、お互いマトモに会話したのは昨日が初めてで“視る”という目的も今日の片尾家訪問で既に終わったのだから、彼の言った通り“昨日、今日の関係”なのだ。それ以上でも以下でもない。亞美自身、明日以降も文学サークルを訪れて彼と関わるつもりがあったわけでもないし、おそらくそれは向こうだってそうだろう。


 なら、何故浅い関係性を指摘されて、感情的になってしまったのだろう。


『えっ、気持ち悪い』


『いや、俺らたかが高校生じゃん。本気でそんな事言われても、俺にどうしてほしいの? その……重いわ』


『相羽さんって、そういう系だったんだね』


『病院、行こう』


 小学校からの友人も、知り合って間もない間柄の人も、初めてできた恋人も、血の繋がった家族だって。


『相羽さんとは幼馴染なんじゃないの?』


『どうせ卒業したら連絡なんて取らないでしょ。ていうか視えるとか言う人……気味悪いし』


 ホームのベンチに座ってぼうっと線路を眺めていると、どんどん視界がぼやけてきた。


 最近は誰にもそんな事を打ち明けなかったから、そういう言葉を耳にする事もなくなって平気になったと勘違いしていた。


 玲汰がそんな、突き放すような意味合いであんな風に言ったわけではない事くらい分かっている。ただ過去の経験から過剰に反応してしまっただけだ。


 ──いや、最初は少し期待していた。ホラー作家だなんて聞いたから、もしかしたら“視える”自分を受け入れてくれるかもしれない、他の嫌厭してきた人たちや上辺だけで信じると言ってきた人たちと違って、或いは尊敬や憧れに近い形の眼差しで見てくれるのではないかと。


 だが、実際はそうではなかった。当たり前のように接し、それは受け入れる事ではなく常識の内の一つ、日常の中の一コマ、霊が日ごろからそこら中に存在するのと同じように、“視える”人だって普通に居るのだと言わんばかりの態度。ただ一言「ふぅん」と言って済ませた。


 期待以上だった。さっきのは、そんな風に自分の事をイレギュラーでない、景色の一部のようにして対応してくれた人にそんな言い方をされてしまったと驚いただけ。


 要は、一人で勝手に喜んで一人で勝手に傷ついただけなのだ。


 彼と親密になりたかったわけではない。昨日今日で他人に惚れたり、仲間意識が芽生えたりするほど自分は簡単な人間なんてない。ただ──。


「別に、昨日今日の関係って……そんなのどうだっていいじゃん」


 気付くと、その言葉はまるで自分に言い聞かせるようにして、口から零れていた。


「……繊細かよ」


 零れそうになった涙をだぼだぼの袖で拭う。


 他人に見られたくなくて、パーカーのフードをかぶった、そのときだった。


 ジーンズのポケットが振動した。スマホに着信が来たようだ。見ると、片尾百子と表示されている。さっきの礼を改めて言いにでもかけてきたのだろうか。


 他人に忌み嫌われてきたこの“視える目”。「視て欲しい」と頼られた事は何度かあったがそのどれもが冷やかしだったから、実質本気でお願いされたのは今回が初めてで、少し嬉しかった。本当にただ視ただけで、何か解決したわけではないけれど、それでも。


 もう一度目元をぬぐい、鼻をすすって咳払いをして、通話に出る。


 片尾家を出てから数時間経っていた。今頃は長田の家に泊まりに行っているだろう、そう思っていると。


「もしもし、相羽だけど」


「……」


 向こう側から音が一切聞こえない。


「百子ちゃん……?」


 静かだ。スピーカー越しに感じる、異様な雰囲気。


 スマホを当てていない左耳を手で塞いで耳を澄ますと、荒い呼吸の音が幽かに聞こえた。その場に居るわけではないのに、なんだか生ぬるい空気が漂っている感覚がして鳥肌が立った。


 するとそこへ、小さく頼りない声で、


「……た、すけて……相羽、さん……」


 百子の悲痛な言葉が届いた。

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