第三十一話☆牛さんの願い
勇気を出して、目を開けてみると牛が私の顔を覗き込んでいた。
おっとぉお!!
思わずまたギュッと目を瞑ってしまう。
『あらら〜?そんなに目に力を入れたら目が痛くなっちゃうわぁ』
突然、ちょっと低めの声が頭の中に響いた。
レアさん!目が合ってないのに意思疎通ができてる気がするんですけど…!
もう一度目をゆっくり開けてみる。
牛の一つの頭が私を真っ直ぐに見つめていた。金色の目が二つ並んでおり、長めの黒いまつ毛で縁取られていた。
ちょっと話しかけてみようかな。
「あ、あの…。こんにちは。」
『あらん。ちゃあんとご挨拶できるじゃないのぉ』
ん〜。危なくはなさそうだけど、キャラが濃そうだな…とりあえず、用件だけ言わなきゃ。
「あ、あの!その…、ミルクが欲しくて…!えっと、それで…。」
知能があり、しゃべる牛に「あなたの乳を下さい!ついでに我が家に来てくれませんか??」…なんて元気に言えず、言葉が詰まってしまう。
『あら、あなたワタクシのお乳が欲しいのねぇ?ふぅん?そうねぇ…』
牛が少し考え込む。
瞬きしている間や、一瞬視線を外している間も牛の声が脳内に聞こえるため、目を合わせなくても意思疎通が取れるのかも。
話せる範囲とか時間の制限とかあるのかな…。
なんて事を考えていると、牛が再び話し始めた。
『ワタクシのお願いを叶えてくれたら、あなたの眷属になるわぁ。それでどお?』
「お、お願いを先に聞いてもいい?」
無茶なお願いだったら怖いもの!先に聞いておきたい…。
『ワタクシの番つがいを見つけてくる事。それがワタクシの願いよぉ。』
多分、今から探すのは大変なのでまた明日探しに行くことになる。そして、それは私の力だけだと絶対に無理。森の中で道案内をしたり、牛を実際に見つけたのは私ではない。
頼れるお友達の力を借りなければ…。
私の斜め上で私たちのやりとりを傍観していたレアに聞いてみる。
「…レア、手伝ってくれる?」
レアはぽかん、と私の顔を見た後、花が咲くように笑った。
「ええ!仕方がないわね!リリィは私がいなきゃダメだものね!」
「ありがとう!…じゃあ、あなたのお願い、頑張って叶えるわ。」
私は再び牛に向き合い、お願いを叶える意思を伝える。
『あらぁ、期待してるわぁ。まぁ、ちょっとヒントをあげる。オスとメスで見た目が違うから気をつけてねぇ。ワタクシより、少し小さくて、全身真っ黒なはずよぉ。』
「分かった!期限はある?」
『ないわぁ。ワタクシはここで待ってるから、可愛いメスを見つけてきてねぇ。』
ん…?
可愛いメス…
え…あなた、オスなの?
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