第二十九話☆妖精の魔石
ふーんふんふんふーん
思わず鼻歌を歌いながらスキップしてしまいそうになる。
いや、もうしている。レアが半目でこちらを見ているような気もするが、もう気にしないでおこう。
何たって今、私はとてもテンションが高いのだ。
食料は何の心配もなく、天気は頗る快晴。
隣を優雅に飛ぶ小さなお友達と、穏やかな森の散策だ。
異世界、素晴らしい!
一つひとつがとても目新しく感じる。
狩りに出る時はかなり神経を尖らせており、周りの景色はあまりゆっくりと見れていないため、全てが鮮やかに色付いて見える。
まぁ、一応、牛か鶏を探しにきたからボーッとは出来ないけど。
今、目の前に飄々と立ち並んでいる木々も、前の世界では見たことがなかったくらい、背が高く、宝石のような実があちらこちらに下がっている。
その宝石は太陽の光の当たり方によってカラフルに光り、大きさは遠くにあるためどのくらいの大きさか分からないが、普通の宝石よりかなり大きいのは確かだ。
「ねぇ、レア。あの木から出てる宝石みたいなのってなあに?」
「あー、あれは妖精の宝石よ。この辺りは妖精の木がたくさんあって、妖精の魔力に当てられた木がたくさんこの宝石を出すのよ。まぁ、簡単に言えば、妖精の魔力を少し含んだ魔石のようなものよ。結構、価値があるのよ?」
「へ〜。魔石って何かに使えるの?」
「魔力を補充できるのよ。まぁ、私たち緑の妖精は森に触れるだけである程度魔力を回復できるから、私達にとっては特に価値がないんだけどね。他の種族にとっては口から手が出るほど欲しいはずよ。もちろん、簡単にはあげないけど。」
レアは悪戯っぽくニカッと笑う。
「どうして?」
「だって、面白くないじゃない。勝手に私たちの溢れた魔力の塊を使うなんて…。ついつい邪魔したくなっちゃうわ。」
「そ、そうなんだ…」
妖精の邪魔って…一体何するんだろう。足を引っ掛けるとかそんな感じなのかなぁ…。
「その、魔石を木から取ったり、使ったりすると、レアはわかるの?」
「えぇ。この森一帯に私の目があると思ってくれていいわ。木と視覚を共有できるのよ!まぁ、この辺りの木だけに限るけどね。それと、魔石を使うと緑の妖精の魔力が出てくるから、それで気づくわ。ピーンってするのよ!」
なるほど。ピーンって言うのはちょっとよく分からない。でも妖精って、この森で起きてる事はほとんど把握できるんだな。すごい。
そういえば緑の妖精ってずっと言ってるけど、妖精って緑以外にもいるのかな。
「ねぇ、レア。妖精って…」
私が話しかけようとレアの方を向くとレアが自分の口元に人差し指を当て、しーっと言った。
静かにって事かな…
レアが真っ直ぐ前を見つめたため、同じ方向を見てみるとその先には
牛がいた。
え、なんか頭が2つあるんですけど。
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