第二十六話♫レアの楽しい日々




初めて会った時、彼女は花畑の中で泣いていた。そこで休もうと思っていた私は彼女の声を鬱陶しく感じ、一言ガツンと怒ってやろうと思い切って姿を見せた。


「あのさぁ!!さっきからずっとうるさ…」

「あら…?あなたとっても綺麗ね」


「…は?」


もちろん私は自分でも顔が整っている方だと思う。それでも、今まで会った人たちは「可愛いね」と言いつつ、内心私の力のことしか考えてなかった。


でも彼女は、純粋に…曇りのない目で私を見てくれた。


だから私は何となく気が向いて、彼女に妖精の祝福をあげた。


彼女は迷子になっていたようだった。私は彼女の魔力の質が似ている人のところに連れて行った。


血縁関係のある人の間では魔力の質がよく似ているのだ。


「ありがとう!妖精様!」


彼女の名前はエリーと言った。彼女の家には、優しそうな両親がいた。本当に、平凡な、でも幸せそうな家族だった。


エリーと過ごす日々は穏やかで楽しかった。時間の流れがゆっくりに感じられて、不思議な感覚だった。


でも、まだ小さいと思っていたエリーはいつの間にか母になっていた。いつの間にかエリーの両親も居なくなっていた。


ある日、エリーは私にゆったりと話しかける。


「私ね、お花が好きよ。だって、あなたと初めて会った場所が綺麗なお花畑だったんだもの。」

「ふーん。私は覚えてないわ。」


本当は鮮明に覚えていたけれど、気恥ずかしくて言えなかった。


「ねぇ、あなたはずっと私のそばにいてくれる?」

「…仕方ないわね。」


私がそう答えると彼女は心底嬉しそうに笑った。


「じゃあ、約束、してくれるかしら?」

「約束…?」


私はいつも気分で行動してるから、約束なんて誰かとした事がなかった。でも、単純に約束、という言葉に魅力を感じ、エリーとなら結んでみたい、と思った。


「いいわ!約束、結んであげる。」

「本当にっ!?嬉しいわっ!約束よ?」

「えぇ、約束ね?」


今思えば、この時が1番幸せだったのかもしれない。


少ししてから、私は不意に妖精の世界にある、自分の種が宿った木が気になった。


別に、木に何かあればすぐに分かるし、なんの心配もないはずだ。でも、無性に見たくなったのだ。そして、自分の木の枝の先をエリーにあげたい、と思った。


妖精の木には大量の魔力が含まれており、とても貴重な物。そして、月の光に当たると眩い光を発し、この世のものとは思えないほど美しいらしい。

まぁ、妖精の世界の木だからこの世って言っていいのか分からないけれど。


私はそんな光景をエリーと一緒に見たい、と思ったのだ。きっと、エリーも喜んでくれるはず。


そんな期待を胸に私はエリーの元を去った。


私は妖精の世界に行き、自分の木の枝を少し千切って、胸に抱え、早くエリーに会いたい一心で家に戻った。



でも…。もう彼女はいなかった。私は必死にエリーを探した。


そして、目の端に入ったのはエリーと瓜二つの女性の姿。


私は自分の姿を消す魔法を解き、その女性に尋ねた。


「ねぇ、あなた。エリーって人を知らないかしら?」


女性は一瞬とても驚いた後、目に涙を溜めて、言った。


「あぁ……。お母さんの言葉通りだわ。約束を守ってくれたのですね。」





「は……?」








あまりにも時間が経ち過ぎていたのだった。

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