第二十五話♫レアの記憶




名前を貰う、と言う事はすなわち相手を主と認める事。


普通なら私が名前を与える側なのに…。でも、目の前の少女には自分以上の何かを感じた。


自分よりおそらく年齢も、体から溢れ出る魔力も、木の切り方すら知らない事から、知識面でも自分は少女より勝っているはず。


でも…でもなんだろう、この違和感。


少女には何かがあった。


面白そうね。


数百年ぶりに心臓が動き出した気がした。


「いいわ!!!私、あなたの妖精になってあげる!!」


だから私は少女を主と認めた。


そして驚く事に少女は私に名前を自分の名前をつけて欲しい、と言った。


この世界では産まれると同時に大人から名前を貰うのがどの種族でも常識。名前を持たないのは知能のない種族のみだ。奴隷でさえも、名前を奪われていても、魂に刻まれた名前は一生変わらない。


もちろん、眷属にする時、相手に名前をつけるが、それは“仮”の名前であり、本来の名前ではない。


だから少女も名前を持っているはずなのだが…。眷属が主に名前を付けるなんて聞いたことがない。


その場合はお互いにお互いの眷属になるのかしら。


どうなるんだろう。まだ、目の前に知らない事がある。あぁ、面白そうだわ。


「決めたわ。あなたの名前はリリィ。リリィ・ガーネット。」


親愛の意味を込めて、同じ苗字にしてみた。


あぁ…。リリィが嬉しそうな顔をしているわ。


話をしてみると、リリィは家を造りたかったようだ。


いいわ。私の得意分野じゃない。


私は出来るだけ快適に過ごせるように、大きめで…庭があって…綺麗なお花が沢山咲いてるの。お風呂に一緒に入って、夜にはベットの上で丸まって寝るの。


よし、完成したわ。きっとリリィも喜んでくれる。


2人で完成した家の中に入る。


うんうん、思ったよりいいじゃないの。


横をチラッと見ると、リリィも予想通りとっても喜んでくれた。水が出ない蛇口を見て少しガッカリしてたけど…仕方ないじゃない。水は操れないのよ。


私はゆっくり部屋の中を見渡す。まだ、殺風景な家だけど、どこか懐かしく感じる、


そうだわ、あそこには確か花瓶を置いて、黄色い綺麗な花を飾っていたはず。

彼女には特等席があって、ずっとそこに座って編み物をしていたかしら。

私が彼女の1つに緩く纏められた三つ編みにお花を差し込んでいくの。


彼女は私のことを見ると、少し目を細めて、優しそうに笑うの。


あぁ…。思い出した…。







ここはあの頃過ごしたお家にそっくりだわ。

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