第二十四話♫レアの気持ち



木を無造作に切り倒していた少女は私の声に気づき、こちらを向いた。


人間…かしら?

見た目は人間だけど、妖精の護りが付いている木を容易く切れるなんて…


妖精の種が眠る木の周辺には妖精の護りがついており、普通の木より何倍も強度があるはずだ。それを人間が容易く、しかも基本魔法のみで切ることはできないはず。


違う種族が容姿を変える魔法を使っているのかしら。それとも、変異種で見た目は人間だけど、種族が違う、とかそんな感じかしら?


まぁ、どちらにせよ面白そう。


黒目黒髪。身長は普通の人間より少し小柄。


こちらを驚いた表情でじっと見つめている。


まぁ、私たち妖精の姿を見れるなんて滅多にないものね。


ずっと昔は仲良く共存していたはずだが、最近では自分のものにしようとしたり、逆に崇めて来たり…。それが鬱陶しくて自分から姿を隠すようになった。


この子はどんな反応をするのだろうか…。


「妖精さん…?」


目の前の少女は呟く。少女は不思議な雰囲気を放っていた。


ふーん。精霊の祝福を持っているのね。


祝福。それは精霊族、妖精族、龍神族、天族などの限られた種族の上位の者だけが与える事ができる。


祝福を与えるには莫大な魔力が必要であり、祝福を与えると、ステータスの大幅な上昇、魔力の受け渡しや、寿命を延ばすことなどができるようになる。だから、本当に認めた人、信頼した人にしか与えない。


そして、祝福が重複しないように、祝福を与える資格を持つ者には相手が誰から祝福を受けているのか、見分ける事ができる。


祝福が重複すると、与える魔力の量が格段に上がる。間違っても自分の魔力を使い果たさないように重複しないかの確認は大切な事なのだ。


精霊に認められてるって事は悪い子じゃないのかしら。


祝福はある種の証明にもなる。祝福を与えた者の意思とかけ離れた事をすれば、“罰”を与えられるからだ。


「妖精さん!お名前は?」


少女がこちらを見て、花が咲くように笑いながら尋ねた。


その瞬間、私の奥深くに眠っていた大切な記憶がフラッシュバックした。






ーーーーーおかえりなさい、***。

ーーーーーねぇ、***。あなたはずっと私の味方でいてね。

ーーーーー見て頂戴!このお花すっごく綺麗だわっ!



焦茶色の腰まで伸びた髪。



優しい目でこちらを見ている…。

あれ…。どんな顔だったかしら。



私にとても似ている口調。


いや、私が真似たその口調。



確か名前は……………あら?何だったかしら。もうすぐで思い出せそう。







あぁ、でも…。いやだわぁ…。思い出したくない。


私は蘇って来ていた自分の記憶にそっと蓋をした。

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