第二十三話♫レアの気まぐれ
私は緑の妖精。この世界で生を受けてからかなりの時間が流れた。何にも縛られることなく、自由に毎日過ごしている。
私を含めた上位の妖精は下位の妖精やまだ個としての存在を保てない妖精とは異なり、亜空間にある、妖精の世界で生活している。
そこでは色々な種の上位の妖精だけが住み、一人ひとりの木を持っている。その木とは生命の糸で繋がっており、妖精の力が弱まれば、木も段々萎れていく。
そして、妖精は長く生きれば生きるほど、魔力が多くなり、その量に比例して木の大きさも多くなる。
私の木はかなり大きくなり、驚くほどの魔力が蓄積されている。
でも、そんな事どうだってよかった。
自由気ままな毎日。知らぬ間に時が流れていく。
「何か面白い事が起きないかしら…」
他の妖精は遊び半分で他の種と契約を結んだり、眷属を増やして過ごしている。
力を与えてみて、その人がどんな行動をするのか、どんな最期を迎えるのか、そんな事を予想して、楽しんでいるらしい。
私には眷属がいない。自分がどれだけ長く生きて、強くなっても眷属には興味が湧かなかった。理由はただそれだけ。
その日、私は何となく妖精の世界から出て、下位の妖精の様子を見に行った。心配して、とかそんな感情は持っていない。そんな“気分”だったのだ。
「ん〜!久しぶりに来たわ。何百年ぶりかしら?ここはいつ来ても緑が沢山あって良いわね。」
間違っても人間の国や、海の中などに出ないように妖精の世界に行く前にあらかじめマーキングしておいた場所に私は降り立った。
確か前に来た時は、ぼーっと人間の街を遠くから眺めていた。時間が流れるのは早い。小さな町だと思っていたら、いつの間にか大きな街へと変わり、いつしか無くなっていく。その繰り返し。
それでも、人間の街では、ずっと泣き声や笑い声、怒鳴る声や嘆く声が聞こえていた。騒がしい一瞬の時を過ぎ、すぐに枯れていく。
理解が出来なかった。私はそのまま妖精の世界へ帰った。それでも、頭の片隅に街の光景が離れなかった。
そんな事を考えながら森の上を飛んでいると、突然、声が聞こえた。
ーーーーキ ガ キラレテル
ーーーーニゲナキャ
ーーーハヤイヨ アブナイ
耳の良い私でも微かに聞こえるほどの微弱な妖精の声。まだ、存在をギリギリ保てるかどうかの力しか持っていないようだ。
もちろん、同族を守ろう、と言う気持ちはあるが、私たち妖精は自分の気分が第一。同族間の仲間意識は高くない。
私にもその考えは当てはまり、下位の妖精が逃げ回っていても、どうだってよかった。
でも、その時、何故かどんな人が木を切っているのか気になった。私はちょっとでも刺激を求めていたのかも知れない。
顔のすぐ横をまだ光の粒程度の大きさの妖精が通った。
「後輩を助ける心優しい先輩をやってみようかしら」
私は騒音を立てながら四方八方に木を切り倒している子に勢いよく近づいた。
自分の姿を見えなくさせていた魔法を解き、叫んだ。
「ちょっと!!!何てことするのよっ!!」
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