第十六話☆この世界


「あら?私は確かに緑の妖精だから植物を操る魔法が1番得意だけど、他の魔法も使えるわよ?」


あれ…。そっか、使えない、とは言ってなかったよね。ってか解体ディセクションの魔法とか普通に使ってた…。


「んー、ちょっと魔法の説明をしてあげる。」


レアは自分の顎に手を当て、少し考え込む。


そんなちょっとした仕草もなかなか可愛い。指が細く、少し体を動かすとキラキラとした粉が舞う。


わざわざ毎朝粉が舞うように仕込んでいるらしい。


幻想的で、ちょっと儚く見える。故意にやってると知ってても、思わず見惚れてしまう。


「あ〜。うーん。確かに、私がさっき使っていたのは、重力操作《グラビティ》って言う魔法よ。

ちょっと説明が長くなるんだけど、元々魔法って言うのは、それぞれはっきりとした属性で仕分けられてたんだけど、ちょっと昔に複合したり、合成して、魔法を使う人が増えてきたのよ。」


レアにとってちょっと昔、って一体いつまで遡るんだろう…。


聞きたい気持ちもあるが、レアの説明を遮るほどでは無いので、後で思い出したら聞こうかな。


レアの説明は続く。


「だから、単に魔法の属性の種類が判別されなくなったの。

私は真反対に位置する魔法じゃ無ければ一応使えるわ。

まぁ、魔法によっては消費魔力が馬鹿みたいに多いから全然使わないし、結構集中力も使うから、好んで使うわけじゃ無いわ。

ちなみに、私にとっての真反対の属性の魔法は、火と水に関する魔法ね。あと、種族的な問題で使えないのが、精霊魔法と、魔族が操る魔法とかかしら。」


「え!魔族??じゃあ、この世界には魔王とかもいるの?」


「魔王…??えぇ、いるわ。今は…6人なのかしら?んー、でも最近代替わりしたとかなんとか…。まぁ、6人くらいよ。」


えっ!?なにそれ!なんか人数多くない?


ちょっと待って!魔王がいるって事は…!


「じゃあ、勇者とかもいるの?」


「えぇ、いるわ。何故かみんな人族なのよね。不思議。あんな弱い種族なのに。まぁ、だからこそかしら。たまに強い人を作らなきゃ、滅亡しそうだし。」


よくあるファンタジー小説では勇者には前世の記憶があったり、違う世界から召喚されるみたいだし…。


少し会ってみたい気持ちもあるけど…。


私はこの世界で生きていきたいから、あんまり会いたく無いな。


自分から前の世界に関する事に積極的に触れようとは思わない。私は、今の生活が結構気に入っている。


私はさっきのレアの話をもう一度思い出す。


ん…?あれ…?異世界の中の人間の位置付けが分からない…。弱いの?人間って。


「えっと…。この世界に人間の国ってある?」


「いくつかあるわよ。ほんっと数だけが多いのよね。自分たちの方が弱いくせに、すっごく他種族を見下してくるし。傲慢なのよ。」


「……私も人間なんだけど…」


「あら?リリィは人間じゃないわよ。」












ん…?えっと…。


私は知らない間に人間を辞めていたらしい。

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