その日、太陽は西から昇ってきた

未完き人

その日、太陽は西から昇ってきた。


今日は一日休みだった。

そういう日ほど早く目が覚めるもので、目が覚めたのはまだ太陽が昇る前だった。

時計を見ると5時50分。


小腹が空いていたので、明るくなったらコンビニに行こうとしばらくベッドの中でうだうだしてた。

6時10分。スウェットの上からパーカーだけ羽織って家を出る。


ズボンのポケットには、携帯と財布と、タバコ、、、を忘れたので一旦戻る。タバコを手に取りポケットへ。ライターを探すのに2分。目は完全に覚めた。

いざコンビニへ。


コンビニまでは徒歩5分。

タバコを吸うのには丁度いい時間。

箱から一本取り出して、火をつけようとした時に何か違和感。

とりあえず、火をつけてひと吸い。煙を吐き出して後ろを振り返る。5メートルほど後ろに猫がいて、目が合った。かわいい。

、、、じゃなくて、なんだこの違和感は。


空を見上げて気づいた。あ、太陽逆だ。

昇ってくる方角、逆だ。

たしか、いつもこの時間にコンビニ行くとき朝日が眩しかったような、、、うん、やっぱり逆だ。

携帯で方角を調べて確信。


これは凄い事が起きたと思ったが、まあとりあえずは問題ないので、一旦保留ということにしよう。

誰かが言ってた、世の中の大抵の事は自分の問題じゃないって。今は、自分の問題を解決しよう。

俺は小腹が空いているんだ。


コンビニ到着。

入り口横の灰皿にタバコを捨て入店。パンとコーヒーを手に取りレジへ。

店員が眠そうに会計をする。袋に入れる動作が遅い。太陽逆なんだぞ、早くしろ。


コンビニを出て、歩きながらもう一度太陽を見る。

うん、逆だ。眩しいもん太陽。

眩しいが、、、しかしそれだけだ。

太陽が西から昇ったからって今すぐなにか変わるわけじゃない。

今日は一日休みだからゆっくりしたい。


家についてパンをかじりながらテレビをつけた。それでびっくりした。

西から昇った太陽に世間は大騒ぎしてた。

前代未聞だ。なぜ急に西から昇ったのか。他の天体はどうか。とかとか。一番驚いたのは、電車が止まってたこと。

これはちょっとよく分からない。

俺が考えてたより、割と大事件だったみたいだ。まあ、そりゃそうか。


それから、昼になっても夜になっても、ニュースはその話で持ちきりだった。

当然、太陽は東に沈んでいった。

ただそれだけ。太陽が西から昇って、東に沈んだってだけ。夜のニュースで特集が組まれて、偉い学者が西から昇った太陽について、色々喋ってたけど、俺にはよく分からなかった。


正直、太陽が西から昇ったからって何かが変わるわけじゃない。

少なくとも俺の生活は変わらない、、と思う。うん、今のところ変化なし。

あ、電車が止まるのはちょっと不便かも

。でも、そのくらい。

大騒ぎするほどじゃない。


そして次の日、またまたニュースが大騒ぎ。

なんと、太陽が東から昇ったのだ。

うん、普通だね。普通なんだけど、じゃあ、昨日はなんだったんだって話。


タバコが吸いたくなって、換気扇の下にいって火をつけ、、、あったライター。

なにか違和感。見上げて気づいた。

換気扇の回る向きが逆だ。

でも、そんなこと大したことじゃない。

むしろこっちの方がよく換気できるかも。


うん、そんなことないか。

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