《第四回偽物川小説大賞》

《第五回こむら川朗読小説大賞》

『そこに映るは苦い夢』

・作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817139556453875998

・企画&講評URL

 ・第四回偽物川小説大賞:https://kakuyomu.jp/user_events/16817139556223025327

  結果&講評:https://note.com/tantankyukyu/n/n970bdb533098

 ・第五回こむら川朗読小説大賞:https://kakuyomu.jp/user_events/16817139556453736660

  結果&講評①:https://note.com/violetsnake206_/n/nf8f989cb9f70

  講評②:https://note.com/violetsnake206_/n/nb16239d8284c


 実は、この話は《可愛い美少年だった主人公、ミツキが自分の身体の成長変化にショックを受ける》様子を書きたくて書きました。

 この『変化』は彼にとって、『僕が可愛くなくなった』ではなく、『僕が僕でなくなった』です。彼にとっては『可愛い僕』が『僕』でした。

 ずっと『可愛い』容姿で生きてきた彼にとって、『可愛い僕』であることは当然の事象でした。その容姿で蔑まれたり、嫌な思いをしてきたとはいえ、彼自身はその容姿を気に入っています。また、彼は要領がいいので、容姿をきっかけに友達ができたり、お小遣い稼ぎをしたりと、それを上手く使って甘い汁も吸っています。

 つまり、『可愛い僕』は彼のアイデンティティの根底にあるもののひとつ。このお話は、それがいつの間にか失われたことで、手足を失ったような絶望を覚えている彼を描こうとしました。

 もちろん、彼の『可愛い』へのこだわりはヤヨイ姉さんへの憧れなどもあったと思います。人格形成の要因はひとつではなく、いろんなものが積み重なって形作られるものだと思うので。


 また、ミツキは器用な男の子です。女装をしながらも、周囲の人たちとそれなりに上手くやっていきます。それ故に、目立ちながらも虐められることはありませんでした。


 ただその器用さは集団でそれなりに上手くやるための器用さで、「特別マイノリティ」な彼が幸せになるにはそれだけじゃ足りないんです。「普通マジョリティ」な男女の価値観や思想には大きな差がある》という話はたまに話題になりますが、「特別」なミツキは「普通」の中では『僕』のままでいられないのです。それでも彼の夢見た幸せは恋愛漫画の中、つまり「普通」の中にあります。

 彼が幸せになるには、もっといろんなものが必要だけど、まだ青年になりかけているだけの彼には答えは分からない。


 だから、この話はバッドエンドです。ハッキリ明示していませんが時系列的には、2話→3話→4話→1話になります。 (※それを暗示するために、各話タイトルをしりとりになるようにしました)

 でも、読後感を良くしたくて、姉さんとの話をラストに持ってきました。


 あと、ポエミーなところは音の雰囲気と感覚で書いています!私も詩のことはあまり分からないので…。上手く伝えられていない方には、ホントに申し訳ないです!

 音楽を聴くとき、私は歌詞をちゃんと聞いてません。意味は分からないまま、心地よい音の羅列として聞いてます。韻文もその感覚で読み、色のように意味を感じています。(※厳密にいうと、『色』とは違うのですけど、客観的に説明するとき、私の中での感覚では色覚と近いなので、色と書きました。)

 もし、このポエムから何かしらを受け取っていただけたのなら、もう私はHAPPYです☆もっと楽しんでいただけるよう頑張ろう!と思っています。

 とりあえず、ネタの部分を以下にだらだらと書かせてもらいます。『不思議の国のアリス』シリーズのオマージュが多めです。


 まず1話目。

笑えないN o g r a s s』と『眼鏡を外すN o g l a s s e s』は英語の音で遊んでます。ふと思いついて、どうしてもやりたくて……!

 母との思い出の場面の『武骨な虫』は幼い頃の『小さな五指』との対比であり、また、アリスの芋虫を意識しています。

 そのあとの、鏡の前で雨乞いみたいに悶えて、髭を抜くところは、天気関連の語とかけて遊んでます。

 あと、その辺りに書いた『杭』は『悔い』とかかってます。

 2話目はそのままなので、3話目。

 彼女を振る場面は、1話の髭抜きを思い出しながら書きました。何となく。髭抜きのときに、彼が彼女のことをふと思い出して余計に哀しくなっているといいなと思って。たとえどんなに苦しくても自分の責任を投げ出さないキャラが私は好きなので。

『破鏡不照』は鏡ネタなのでやりました。というか、そういう語がないか探してやりました(笑)

 似た意味で、「覆水盆に返らず」という慣用句が私は好きです。壊すことや終わらせることは簡単ですけど、そこから元に戻すことは難しいというのは、忘れちゃいけないことだと思います。「元に戻せない」とまでは言わないですけど、それは壊す前とは別物にしかならないので。


 合コンでのレタスチシャの葉ニヤニヤ笑い grin like a Cheshire cat は、その後の猫被りと合わせての言葉遊びです。前の『N o g r a s s』もですが、英語のルビ芸の使い方は今後工夫していきたいと思います。

 また、『白バラを塗る』のもトランプ兵が間違いを誤魔化すネタで、猫被りと少し意味が被ってます。彼は自分の不快感を隠すためにちょっとぐちゃぐちゃな気持ちになってしました。


 それで、最後の『双子コーデ』の件。これは1話で書かれている彼の変化が周囲親しい人から見たら、対して分からないレベルという意味を込めています。成長して大人になったところで、ミツキが大切な『可愛い』弟には変わりないので。


 でも、彼にとっては衝撃的な「変化」であり、このあときっと悶々として生きていくのだろうと思います。このまま普通の男になるのか。「僕」でいるべくもがき続けるのか。それとも、……。


 続きがあまり思いつかなかったのですけれど、先日Twitterでの話題を見て、ふと書きたい気持ちが起こりました。

 近日中に何か書けたらいいなーと思っています。

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